- 株式会社等による契約書への署名の際、会社名のみの署名で、住所、担当者の役職・氏名等が無い場合は、契約は有効に成立するのでしょうか?
- 契約書に会社名のみを署名した場合、理論上は契約が有効に成立する可能性はありますが、現実的には、それを証明する方法はありません。ただし、実印の押印がある場合は、有効に成立する可能性はあります。
契約書を含む私文書は、民事訴訟法第228条第4項により、署名があるときは、真正に成立したものと推定されます。
民事訴訟法第228条(文書の成立)
(途中省略)
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
5(省略)
つまり、たとえ会社名しか署名されていなかったとしても、それが有効な署名である限り、理論上は契約が有効に成立する可能性はあります。
しかしながら、この会社名のみの署名には、以下の問題があります。
会社名のみの署名の問題点
- 住所の記載が無いため、同じ会社名の会社が複数ある場合は、契約当事者の特定ができない。
- 契約締結権がある役職付きの署名者の氏名が無いため、会社の意思として契約の締結を目的として署名したのかが判断できない。
このため、現実的には、会社名だけ署名された契約書は、契約が有効に成立した証拠にはなりません。
なお、署名に加えて、実印(およびこれを証明できる有効な印鑑登録証明書の取得)の押印がある場合は、上記1.の問題点は解決できますので、契約が有効に成立する可能性は高くなります。
ただし、依然として、上記2.の問題点は残りますので、代表取締役の役職・氏名を(代筆=記名であっても)記載しておくと、契約が有効に成立する可能性がより高くなります。
この他、株式会社による契約書への署名・サインのしかたにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
まとめ
- 会社名だけの署名であっても、契約は有効に成立する可能性はあるものの、これはあくまで理論上の話。
- 現実には、会社名だけの署名がされた契約書は、当事者や契約締結の意思の確認ができないため、契約が有効に成立した証拠にはならない。
- 署名に加えて、実印の押印があれば、契約が有効に成立する可能性が高くなるものの、なるべく代表取締役の役職・氏名も併せて記名・署名するべき。