このページでは、株式会社が契約当事者になる場合における、署名・サインのしかたについて解説しています。

株式会社が当事者となる場合、署名者・サイナー個人による署名・サインではなく、会社による署名・サインとなるように注意します。

なお、個人事業者・フリーランスとしての署名・サインのしかたにつきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

個人事業者・フリーランスによる契約書への署名・サインのしかたは?




株式会社の署名・サインのしかた

株式会社の署名・サインの具体例

株式会社が契約当事者となる場合、契約書には、次のようにサインします。

株式会社の署名欄の署名方法

〇〇県〇〇市〇〇町◯-◯-◯
◯◯株式会社 ◯◯(肩書き) ◯◯ ◯◯(氏名) 

株式会社の代表取締役の署名・サインの具体例

山田産業株式会社という会社の代表取締役の鈴木一郎さんがサインする場合は、次のとおりです。

株式会社の署名欄の署名方法

〇〇県〇〇市〇〇町◯-◯-◯
山田産業株式会社 代表取締役 鈴木一郎 

この場合の押印は、会社の実印(法務局への届出印)によるものです。

ただし、氏名が直筆による署名・サインであれば、押印はなくてもかまいませんし、認め印による押印でもかまいません。

なお、代表取締役による署名・サインにつきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

株式会社の代表取締役による契約書への署名・サインのしかたは?

代表取締役以外の役職の署名・サインの具体例

山田産業株式会社という会社の営業部の専務取締役(営業部長)の高橋二郎さんがサインする場合は、次のようになります。

山田産業株式会社の署名欄の署名方法

〇〇県〇〇市〇〇町◯-◯-◯
山田産業株式会社 営業部 専務取締役営業部長 高橋二郎 

この場合、氏名が直筆による署名・サインであれば、押印はなくてもかまいませんし、認め印による押印でもかまいません。

ただし、氏名が直筆でない、記名(印刷などの場合)の場合は、個人の実印を押印してもらうべきです。

なお、取締役や、専務・常務・支店長・営業所長などの上級管理者・上級管理職による署名・サインにつきましては、詳しくは、それぞれ次のページをご覧ください。

株式会社の取締役による契約書への署名・サインの契約は有効?

株式会社の専務・常務・支店長・営業所長による契約書への署名・サインの契約は有効?

また、課長・係長・営業員による署名・サインにつきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

株式会社の課長・係長・営業員による契約書への署名・サインの契約は有効?





会社としてのサインの5つのポイント

【ポイント1】必ず正式な商号を記載する

会社として契約書への署名・サインをする場合は、必ず正式な商号を記載します。

株式会社を「(株)」のように省略せず、また、前株・後株も間違えてはいけません。

商号の記載がないと、当然ながら、会社としての署名・サインとしては、非常に証拠能力が低くなります。

こうした商号の記載がない契約書では、なんらかのトラブルがとなった場合に、証拠としては機能しないおそれがあります。

このため、どんな状況であっても、会社として署名・サインをする場合は、必ず商号を記載してください。

【ポイント2】署名者・サイナーの所属部署・役職(肩書き)を明記する

署名者・サイナーがどのような者であれ、必ず、所属部署がある場合はその所属部署を記載します。

併せて、その所属部署における契約締結の権権があることを証明するため、役職(肩書き)を記載します

なお、所属部署と役職(肩書き)を記載したからといって、必ず会社による署名・サインとなるとは限りません。

特に、役職(肩書き)によっては、契約締結の権限が無いとみなされるリスクがあります。

このため、会社として契約書に署名・サインする署名者・サイナーは、契約内容にふさわしい役職の者とするべきです。

【ポイント3】押印はできるだけ会社の実印とする

理論上、署名者の直筆による署名・サインであれば、特に押印は必要ではありません。

ただ、より確実な署名・サインとするのであれば、会社の実印(法務局への届出印)によるい押印があるといいでしょう。

また、直筆でない、記名(印刷やゴム製の社判の押印)の場合は、実印の押印は必須です。

これに加えて、その押印の印鑑登録証明書があれば、より確実ではあります。

もっとも、相手方に印鑑登録証明書の提供を求めるのは、相手方にとって手間がかかるため、心証を害する可能性もあります。

【ポイント4】代表取締役以外の署名・サインでは押印は個人の印鑑

代表取締役以外の者による署名・サインも、同様に、直筆による場合は、特に押印は必要ではありません。

直筆でない、記名(印刷やゴム製の社判の押印)の場合は、その個人の方の実印の押印をしてもらってください。

また、こちらの場合も、なるべく個人の方の印鑑登録証明書の提出を求めてください。

商号や氏名の表記が記名であり、実印かどうかも確認できない押印では、一般的な企業法務では、証拠として扱えません。

こうした場合は、再度手続きし直すようなレベルの話です。

【ポイント5】住所も記載する

契約書に住所の記載がなくても、理論上は、契約は有効に成立します。

しかし、一般的な契約書には、当事者を特定するために、住所を記載します。

会社による契約書への署名・サインも同じことです。

会社の場合は、会社の本社の住所(通常は登記されている本店所在地)を記載します。

ただし、署名者が支社長・支店長・営業所長のように、ある店舗を統括する立場にある場合は、その店舗の住所を記載する場合もあります。

ポイント
  • 会社として署名・サインする場合は、必ず正式な商号を記載する。
  • 署名欄には、署名者・サイナーの所属部署・役職(肩書き)を明記する。
  • 契約書への押印は、できるだけ会社の実印とする。
  • 実印が難しい場合は、担当者による直筆の署名・サインか、署名者・サイナーの個人の実印とする。
  • 住所(登記された本店所在地か担当店舗の住所)を記載する。





【補足】会社名だけの契約書は有効か?

なお、ごくまれに、会社名しか記載されていない契約書を見かけることがあります。

こうした会社名だけの契約書であっても、実印が押印してあれば、契約は有効に成立しているものと思われます。

実印以外の押印では、その契約当事者が契約を締結する意思で押印したとは言い切れません。

このため、契約が有効に成立したとはみなされない可能性が高いです。

ポイント

会社名だけの契約書による契約は、実印が押印していれば、有効に成立する可能性が高い。