注文書を作成する場合、受注者への敬称として、「御中」や「様」を使うべきでしょうか?また、受注者が注文書を作成する場合は、自身への宛先として「行」や「宛」とするべきでしょうか?
注文書における受注者への敬称は、特に法律で決まっているルールはありません。一般的なビジネスマナーとしては、敬称として「御中」を記載します。
なお、受注者が注文書を作成する場合も同様にルールはありませんが、宛先を「行」や「宛」とすると、発注者にとっては迷惑になる可能性もあるため、同じく「御中」にしておくべきでしょう。

このページでは、注文書を作成する発注者・受注者の双方向けに、注文書の宛先である受注者の敬称について解説しています。

注文書の宛先である受注者への敬称については、特に法律で決まっているルールはありません。

このため、特に敬称をつける必要はありませんし、敬称の有無によって法的な効果が変わってくるものでもありません。

ただ、発注書は、発注者が受注者に対して差し入れる形式の書面であるため、敬称をつけるとすれば、「御中」を使うべきです。

このページでは、こうした注文書の敬称について、開業22年・400社以上の取引実績がある行政書士が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • 注文書に記載する敬称の必要性。
  • 注文書の受注者の宛先に使うべき敬称。
  • 受注者の宛先として「行」「宛」を使うべきでない理由。




注文書では敬称を書く必要はない

注文書は事実関係を記載した書類に過ぎない

契約書や注文書では、企業名や個人名に対して、敬称を使う必要はありません。

契約書や注文書は、事実関係としての契約内容や契約の申込みの意思を記載した書類に過ぎません。

【意味・定義】注文書・発注書とは?

注文書・発注書とは、契約の申込みを証する書面をいう。

また、契約書や注文書の書き方としては、形式上は契約当事者は対等のものとして記載します。

このため、上下関係を表現することとなる敬称(「様」や「殿」の表記)をすることはありません。

注文書に敬称を付けなくても法的には問題はない

なお、法的には、注文書の敬称について、特にルールは定められていません。

このため、契約自由の原則によって、注文書に敬称を書いても書かなくても、法的には特に問題はありません。

【意味・定義】契約自由の原則とは?

契約自由の原則とは、契約当事者は、その合意により、契約について自由に決定することができる民法上の原則をいう。

当然ながら、注文書の敬称の有無が契約内容に影響を与えることはありません。

注文書の書き方によっては敬称を使う場合もある

ただし、注文書は、発注者が受注者に対し一方的に差し入れる形式の書面です。

このような差入形式の書面では、慣例として、宛先に敬称を使う場合もあります。

具体的には、注文書の前文などで、差し入れられる当事者=受注者に敬称を付ける場合もあります。

契約条項の記載例・書き方(注文書の前文)
注文書
受注者:佐藤商事株式会社 御中

発注者である株式会社鈴木工業は、●年●月●日付け で締結した取引基本契約(以下、「基本契約」といいます。)第●条第●項にもとづき、次のとおり個別契約の申込みをおこないます。





注文書の敬称は「御中」?「様」?

原則:注文書の敬称は「御中」

注文書に敬称を付ける場合、受注者の敬称は、「御中」であり、「様」ではありません。

「御中」は、企業や組織に対する敬称であり、「様」は個人に対する敬称です。

注文書は、契約の締結について申込みをする書面です。

【意味・定義】申込みとは?

申込みとは、契約の締結をしようとする意思にもとづき申込者から他人に対して申し入れられる意思表示をいう。

このため、注文書の宛先である受注者は、法人であれ個人事業者であれ、組織としての事業者であって、個人ではありません。

よって、受注者が法人・個人事業者のいずれであっても、商号(個人事業者の場合は屋号)+御中を使用します。

なお、紙の注文書を郵送する場合で、担当者の氏名まで把握しているときは、封筒の宛先としては、会社名+部署名+担当者氏名+様(または役職)を記載します。

例外:屋号のない個人事業者の場合は「様」

ただし、屋号のない個人事業者が受注者の場合は、契約当事者の表記として、個人名を使う場合もあります。

この場合は、「個人名+御中」では不自然であるため、「個人名+様」を使います。

なお、この他、個人が契約当事者となる場合として、一般消費者が契約当事者となる場合もあります。

しかし、通常、一般消費者が受注者になることは考えにくいため、注文書では、一般消費者が相手方になることは想定する必要はありません。





受注者が作成する注文書では受注者の宛先は「行」や「宛」にするべき?

「御中」や「行」「宛」はどちらを使っても法的には問題ない

受注者の中には、注文書のひな型を自身で作成していて、その注文書を使用することもあるでしょう。

この場合、自身が作成した注文書であるにもかかわらず、自身(受注者)の名称に「御中」の敬称を付けることは失礼に当たる、という考えもあります。

この場合、受注者に対する敬称である「御中」ではなく、単なる宛先を意味する「行」や「宛」を使用することもあります。

この「御中」と「行」や「宛」についても、どちらを使ったとしても、特に法的には問題ありません。

注文書の「行」「宛」は安易に修正するものではない

ただ、「行」や「宛」を使った場合、発注者にとっては、扱いに困る場合があります。

返信用封筒や往復はがきの場合は、2重線で「行」や「宛」を打ち消し、「御中」や「様」に修正することがマナーとされています。

しかしながら、注文書は、返信用封筒や往復はがきとは異なり、注文=契約の申込みの証拠となる法的に正式な書面です。

このため、たとえ宛先や敬称であったとしても、安易に修正するべきものではありません。

注文書の「行」「宛」は発注者に余計な配慮を求めることになるため「御中」を使う

このため、注文書の受注者への宛先として「行」や「宛」が書かれていた場合、発注者としては、これを修正するべきか、そのまま交付するべきか、判断に迷うことがあります。

このように、「行」や「宛」を使用した場合、発注者に対し、余計な判断や配慮を求めることになります。

このため、最初から「御中」としておくか、または敬称や宛先を使わずに済むようなひな型とするべきです。

なお、発注者としては、注文書の「行」や「宛」は、修正してもしなくても、特に法的には問題ありません。

このため、受注者との関係性に応じて、対応を変えても構いません。

この他、契約書に記載する敬称につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

敬称の書き方―契約書・注文書・注文請書では会社名や個人名に様をつける?





注文書の敬称・宛先に関するよくある質問

 

注文書や注文請書に「御中」とつけるのはなぜですか?
注文書や注文請書は、一方の当事者から他方の当事者に対して一方的に差し入れる形式の書面です。このため、宛先を明記するため、交付する相手方の敬称として、「御中」とつける場合があります。

 

注文書の「御中」の消し方は?
注文書において発注者の名称に付けられた「御中」は、2重線を引くことによって消します。なお、「御中」を消さなかったからといって、法的に問題になることはありませんので、消さずにそのまま交付しても、法的には問題ありません。
注文書や注文請書に「御中」とつけるのはなぜですか?
注文書や注文請書は、一方の当事者から他方の当事者に対して一方的に差し入れる形式の書面です。このため、宛先を明記するため、交付する相手方の敬称として、「御中」とつける場合があります。
注文書での「御中」と「様」の違いは何ですか?
注文書での「御中」と「様」の違い、商号や屋号につける敬称が「御中」であるのに対し、屋号のない個人事業者につける敬称が「様」である点です。