- 業務委託契約書は委託者と受託者のどちらが作成するべきなのでしょうか?
- 原則として、業務委託契約書は、委託者と受託者のどちらが作成しても構いません。ただし、下請法やフリーランス保護法が適用される場合は、親事業者や業務委託事業者である委託者が法定書面として業務委託契約書を交付する義務がある場合もあります。
なお、一般的な企業間取引の業務委託契約書は、受託者の本業の契約書であることから、通常は受託者が作成していることが多いです。
契約全般に適用される民法や商法では、契約書の作成については、特にどちらかの当事者に作成を義務づけてはいません。
そもそも、契約の大原則として、「契約自由の原則」があります。
この契約自由の原則のうちの、「方法自由の原則」により、契約書は、誰が用意しても構いません。
【意味・定義】方法自由の原則(契約自由の原則)とは?
方法自由の原則とは、契約自由の原則のひとつであり、契約締結の方法を自由に決定できる原則をいう。
よって、業務委託契約書についても、委託者と受託者のどちらが作成しても構いません。
ただし、下請法やフリーランス保護法が適用される業務委託契約書については、委託者が受託者に対して交付する義務があります。
下請法が適用される場合、委託者は、下請法の親事業者として、下請事業者である受託者に対し、いわゆる「三条書面」を交付する義務があります。
【意味・定義】三条書面(下請法)とは?
三条書面(下請法)とは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)第3条に規定された、親事業者が下請事業者に対し交付しなければならない書面をいう。
同様に、フリーランス保護法が適用される場合、委託者は、フリーランス保護法の業務委託事業者として、特定受託事業者である受託者に対し、いわゆる「三条通知」を明示する義務があります。
【意味・定義】三条通知(フリーランス保護法)とは?
三条通知とは、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)第3条に規定された、業務委託事業者(発注事業者)が特定受託事業者(フリーランス)に対し明示しなければならない通知をいう。
このため、三条書面や三条通知として業務委託契約書を使用する場合、委託者は、受託者に対し、業務委託契約書を交付しなければなりません。
ただし、委託者に課されている義務は、あくまで書面等(業務委託契約書)の「交付」や「明示」の義務であって、受託者が作成した業務委託契約書を交付しても、法的には問題ありません。
なお、一般的な企業間取引における業務委託契約書は、受託者の本業に関する契約書であることから、通常は、受託者があらかじめ作成しているものです。
逆に言えば、本業に関する契約書であるにもかかわらず、受託者があらかじめ業務委託契約書を作成していない場合は、コンプライアンス上、何らかの問題を抱えている可能性が高いと言えます。
例外として、いわゆる購買部門や外注部門が存在する、事業規模が非常に大きな大企業が委託者となる場合は、委託専用の業務委託契約書を作成している場合もあります。
この他、契約書全般に関する作成当事者の注意点につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
まとめ
- 業務委託契約書は、委託者と受託者のどちらが作成しても構わない。
- 下請法やフリーランス保護法が適用される場合、委託者が受託者に対し業務委託契約書を交付する義務がある。ただし、作成の義務までは課されていないため、受託者が作成した業務委託契約書を交付しても問題ない。
- 一般的な企業間取引の業務委託契約の場合、受託者の本業の契約書であることから、通常は、受託者が業務委託契約書を作成していることが多い。