こんにちは。契約書作成専門・小山内行政書士事務所代表の小山内です。

このページでは、契約書への署名者・サイナーのうち、株式会社の専務・常務・支店長・営業所長など、上級管理者の役職について解説しています。

専務・常務・支店長・営業所長などの上級管理者・上級管理者による署名・サインは、通常は、株式会社などの法人の署名・サインとして、有効となります。

このため、こうした署名・サインがある契約書は、法人として、契約が締結されたものとみなされます。

なお、この場合、専務・常務・支店長・営業所長が取締役でなくても、署名・サインは有効となります。

このページでは、こうした上級管理者・上級管理職による、契約書への署名・サインについて、わかりやすく解説します

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会社の署名者・サイナーは代表取締役とは限らない

本来は代表取締役による署名・サインが望ましい

株式会社と契約を締結する場合、本来であれば、その会社を代表する者、つまり代表取締役が、署名者・サイナーとなるのが望ましいといえます。

代表取締役が、会社名(商号)と肩書(代表取締役)を記載のうえ、契約書に署名・サインした場合、その会社として契約を締結したことになります。

この場合は、代表取締役個人として契約したことにはなりません。

株式会社の代表取締役による契約書への署名・サインのしかたは?

代表取締役はすべての契約書に署名・サインしていられない

実印の押印も無制限にはできない

ただ、実際のところ、契約を締結する度に代表取締役がサインしていては、代表取締役も仕事になりません。

特に、大企業ともなると、契約書の数も膨大になりますから、署名・サインだけでも大変です。

このため、実務上は、代表取締役の署名・サインの代わりに、記名(ゴム製の社名印や印刷)+実印の押印で対応します。

ただ、実印は、代表取締役の署名・サインと同様の法的効果がありますので、気軽に使うものではなく、通常はかなり厳格に管理されているものです。

上級管理職・上級管理者の署名・サインで対応する

そこで、実際の契約の現場では、一定の権限・肩書き・役職を持った者がサインすることがあります。

具体的には、専務・常務・支店長・営業所長のような上級管理職・上級管理者が該当します。

これらの者による署名・サインにより、通常は、会社としての契約が有効に成立します。

以下、こうした専務・常務・支店長・営業所長の署名・サインの注意点について解説していきます。

ポイント

  • 株式会社の代表取締役は、すべての会社の契約書に署名・押印をしていられない。
  • 実印の押印は代表取締役の署名・サインと同様の法的効果があるため、気軽にできない。
  • 一定以上の権限を持った役職(専務・常務・支店長・営業所長)の署名・サインは、会社を代表する署名・サインと同様の法的効果を持つ。
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専務・常務の署名・サインで契約は成立する

代表権がある専務・常務もいる

署名・サインが専務・常務のものであっても、その専務や常務に代表権があれば、何の問題もありません。

そもそも、専務や常務、あるいは社長や会長、頭取などの肩書きというのは、あくまで会社内部の職制にもとづくものです。

こうした肩書きは、法律的には、まったく意味がありません。極端な話ですが、従業員全員が「社長」という肩書きがあっても構いません。

ですから、肩書きが何であろうと、代表権がある=代表取締役であれば、当然、その署名・サインにより、契約は、会社によるものとして、有効に成立します。

取締役の専務・常務でも契約は有効に成立する場合もある

もっとも、常務や専務に代表権がない場合は、理論上は、会社として契約を締結したことになりません。

この場合、契約の当事者は、会社ではなく、専務や常務個人であると判断される可能性があります。

ただ、会社法には、表見代表取締役という制度があります(会社法第354条)。

表見代表取締役の定義

表見代表取締役とは、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を株式会社が付けた場合において、その株式会社が、善意の第三者に対し責任を負う制度のことをいう。

ここでいう善意の第三者とは、事情(この場合は、本当は代表権がないこと)を知らない第三者、ということです。

この表見代表取締役の規定により、一方の契約当事者の署名者が取締役である専務・常務の場合に、他方の契約当事者がその専務・常務に代表権があるものと信じたときは、その契約は、法人によって締結されたものとなります。

判例でも、常務取締役について、同様の判決が出ています(最高裁判決昭和35年10月14日)。

ポイント

  • 代表権を持つ代表取締役の専務・常務の署名・サインは、当然法人を代表する署名・サインとなる。
  • 会社法の表見代表取締役の制度により、代表権のない取締役の専務・常務の署名・サインも法人を代表する署名・サインとなる場合もある。
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支店長・営業所長の署名・サインで契約は成立する

支店長・営業所長は「支配人」

支店長・営業所長は、一般的には代表権を有していません。このため、理論上は、支店長や営業所長の署名・サインでは、会社と契約を締結したことにはなりません。

ただ、一般的に、支店長・営業所長は、会社法では支配人とされます(会社法第11条)。

「支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有」します。

この「権限」には、会社に代わって=会社として、契約を締結する権限も含まれます。

このため、契約書に支店長・営業所長の署名・サインがある場合は、その会社と契約を締結したことになります。

実際に支店長・営業所長でなくても契約は有効に成立する

また、実際は、支店長や営業所長ではないのに、支店長・営業所長であるかのような肩書きを有する者が契約書に署名・サインをした場合も、会社と契約を締結したことになります。

このような場合は、その支店長・営業所長を装った者は、表見支配人とされます(会社法第13条)。

表見支配人の定義

表見支配人とは、会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人について、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなされる制度のことをいう。ただし、相手方が悪意の場合は、そのようにみなされない。

ここでいう「悪意」とは、その表見支配人が本当は支配人でないことを知っていること、を意味します。

この表見支配人の規定により、一方の契約当事者が、相手方の署名者・サイナーである表権支配人を支配人と信じてしまった場合は、契約は、会社と締結したものとして成立します。

ポイント

  • 支店長・営業所長は、会社法では「支配人」。
  • 支店長・営業所長=支配人による署名・サインは、会社を代表する署名・サインとなる。
  • 実際には支店長・営業所長でなくても、会社法の表見支配人の制度により、会社を代表する署名・サインとなることもある。
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会社法だけでなく契約書でも対策する

代表権がない場合でも有効な著名・サインとなるようにする

このように、会社を代表する代表取締役の署名・サインでなかったとしても、会社による契約の締結とみなされる会社法の制度や判例があります。

こうした会社法の制度や判例により、専務・常務・支店長・営業所長の署名・サインの多くは、会社によるものとみなされます。

ただ、せっかく契約書に署名・サインをしてもらうにもかかわらず、その契約が会社と締結するかどうかについて、会社法や判例だけに頼るわけにはいきません。

そこで、契約書にも、万が一、代表権がない者が署名・サインした場合についての対策を記載しておきます。

契約書には契約を締結する代表権があることを明記する

具体的には、サインをする者が、会社として契約を締結する権限を有している旨を宣誓する条項を規定しておきます。

特に、こうした内容は、署名欄の直前(いわゆる後文)に記載しておくと、効果的でしょう。

これにより、仮に代表権がない者が署名・サインをした場合であっても、すでに触れた表見代表取締役や表見支配人の規定を、より適用しやすくなります。

なお、株式会社の署名・サインのしかたにつきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

株式会社による契約書への署名・サインのしかたは?

ポイント

  • 会社法に頼るのではなく、契約書にも、会社としての署名・サインとなるように、工夫する。
  • 契約書の後文には、署名者・サイナーに契約の締結権があることを宣誓させ、明記する。