建設工事請負契約書は注文者と請負人のどちらが作成するべきなのでしょうか?
建設工事請負契約書は、注文者と請負人のどちらが作成しても構いません。
なお、建設業法第19条により、「建設工事の請負契約の当事者」に対し、建設工事請負契約書の作成が義務づけられています。また、一般的な建設工事請負契約書は、発注側・受注側のいずれの場合であっても、建設業者が作成していることが多いです。

契約全般に適用される民法や商法では、契約書の作成については、特にどちらかの当事者に作成を義務づけてはいません。

そもそも、契約の大原則として、「契約自由の原則」があります。

【改正民法対応】契約自由の原則とは?4つの分類と例外をわかりやすく解説

この契約自由の原則のうちの、「方法自由の原則」により、契約書は、誰が用意しても構いません。

【意味・定義】方法自由の原則(契約自由の原則)とは?

方法自由の原則とは、契約自由の原則のひとつであり、契約締結の方法を自由に決定できる原則をいう。

よって、建設工事請負契約書についても、注文者と請負人のどちらが作成しても構いません。

ただし、建設業法第19条では、「建設工事の請負契約の当事者」に対し、建設工事請負契約書の作成義務を課しています。

建設業法第19条(建設工事の請負契約の内容)

1 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従って、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

(1)工事内容

(2)請負代金の額

(3)工事着手の時期及び工事完成の時期

(4)工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容

(5)請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法

(6)当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め

(7)天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め

(8)価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更

(9)工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め

(10)注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め

(11)注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期

(12)工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法

(13)工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容

(14)各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金

(15)契約に関する紛争の解決方法

(16)その他国土交通省令で定める事項

2(以下省略)

このため、建設工事請負契約の当事者である注文者または請負人の少なくとも一方は、建設工事請負契約書を作成しなければなりません。

また、一人親方が請負人となる建設工事請負契約書の場合、フリーランス保護法が適用されます。

この場合、注文者が一人親方である請負人に対して、建設工事請負契約書を交付する義務があります。

具体的には、フリーランス保護法が適用される場合、注文者は、フリーランス保護法の業務委託事業者として、特定受託事業者である請負人(一人親方)に対し、いわゆる「三条通知」を明示する義務があります。

【意味・定義】三条通知(フリーランス保護法)とは?

三条通知とは、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)第3条に規定された、業務委託事業者(発注事業者)が特定受託事業者(フリーランス)に対し明示しなければならない通知をいう。

フリーランス新法(保護法)の三条通知(3条通知)とは?

このため、三条通知として建設工事請負契約書を使用する場合、注文者は、請負人(一人親方)に対し、建設工事請負契約書を交付しなければなりません。

なお、建設工事請負契約書は、建設業者の本業に関する契約書であることから、通常は、(発注側・受注側を問わず)建設業者があらかじめ作成しているものです。

逆に言えば、本業に関する契約書であるにもかかわらず、建設業者があらかじめ建設工事請負契約書を作成していない場合は、コンプライアンス上、何らかの問題を抱えている可能性が高いと言えます。

また、建設業者同士の取引きの場合、通常は、発注者のほうが立場が強いため、建設工事下請負契約書は、発注者が作成することが多いです。

これに対し、建設業者でない個人・企業が施主である場合、建設工事請負契約書を作成していることはまずありません。

例外として、いわゆる購買部門や外注部門が存在する、事業規模が非常に大きな大企業が注文者となる場合は、発注側としての建設工事請負契約書を作成している場合もあります。

この他、契約書全般に関する作成当事者の注意点につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

契約書はどちらが作成するべき?

まとめ
  • 建設工事請負契約書は、注文者と請負人のどちらが作成しても構わない。
  • 建設業法第19条により、注文者または請負人の少なくとも一方は、建設工事請負契約書を作成しなければならない。
  • フリーランス保護法が適用される場合、注文者が請負人(一人親方)に対し建設工事請負契約書を交付する義務がある。
  • 一般的な建設工事請負契約の場合、本業の契約書であることから、通常は、建設業者が建設工事請負契約書を作成していることが多い。