こんにちは。契約書作成専門・小山内行政書士事務所代表の小山内です。

このページでは、契約書の雛形を修正・調整する際の注意点として、契約当事者の立場の優劣について、解説しています。

契約書は、理論上は、対等な内容とすることはできます。

しかし、実際の契約書は、ほとんどがどちらかにとって有利な内容なっています。

このため、契約書の雛形を使う場合も、自社にとって有利な内容となっているものを使うべきです。

また、個々の契約条項についても、自社にとって有利な内容に修正・調整するべきです。

このページでは、こうした契約書の優劣について、解説します。

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契約書の内容は必ず優劣関係がある

契約関係は優劣があるのが当たり前

ビジネスでの取引では、程度の差はあっても、当事者間に立場の優劣関係があります。

立場の差が比較的少ないことはあっても、まったく平等で対等な関係は、まずありません。

こうした当事者間の立場は、契約内容にも反映されます。

当然、契約内容も、ある程度は、どちらかが優越したものとなります。

「対等な契約」は机上の空論

もっとも、理屈のうえでは、契約内容を対等のものとすることはできます。

というのも、契約自由の原則により、自由に契約内容を規定できるからです。

例えば、秘密保持契約のような特殊な内容の契約は、対等な内容とする場合もあります。

ただし、こうした一部の例外を除いて、ビジネス上の契約が対等な内容となることは、机上の空論であり、まずあり得ません。

ポイント

  • ビジネスでの当事者間の関係は、程度の差はあっても、必ず優劣関係があり、その優劣関係が契約内容に反映される。
  • ビジネス上の契約書で「対等な契約」はあり得ない。一部の例外を除いて、「対等な契約」は、あくまで理論上の存在であり、机上の空論。
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雛形がどちらにとって有利かを見極める

作成者の意図からある程度推測できる

雛形の契約書でも、それぞれの雛形によって、立場の優劣が違います。

こうした立場の優劣は、作成者の意図から推測ができます。

例えば、一般的に、各種業界団体が作成している雛形は、その団体に属している会員などのために作成されています。

ですから、どちらかというと、その団体に属している当事者にとって有利な内容となっています。

業界団体が作成した契約書の雛形の優劣は?

業界団体が作成している契約書は、一般的には、そこに所属する企業にとって有利なものが多い。

また、役所が作成している雛形は、保護されるべき者のために作成されています。

特に、企業よりも国民ひとりひとりの方が有利となっていることが多いです。

ですから、どちらかというと、企業側にとって不利な内容となっています。

役所が作成した契約書の雛形の優劣は?

役所が作成した契約書は、一般的には、企業に規制を守らせるために作成することが多い。このため、企業にとって不利な内容のものも多い。

役所が作成した契約書の雛形の注意点・リスク・デメリットは?

作成者不詳の契約書は要注意

どっちつかずの契約書もある

こうした、作成者がハッキリしている契約書の雛形は、契約当事者のどちらにとって有利なのかがわかりやすいものです。

他方で、作成者がハッキリしない契約書の雛形は、ものによっては、どちらにとって有利かが、わかりづらいことがあります。

こうした作成者不詳の契約書には、例えば、ある契約条項は甲にとって、別の契約条項は乙にとって有利にできているものもあります。

つまり、どちらか一方にとって有利な、一貫した内容となっていない、「どっちつかずの契約書」である場合があります。

相手方が有利な契約書が作成されることもある

こうしたどっちつかずの契約書は、雛形に限った話ではなく、誰かのために作成した契約書でもあり得る話です。

以前、管理人がリーガルチェックをした案件で、このような契約書がありました。

つまり、ベンダ側(開発側・システム開発会社側)の依頼で作成されたシステム開発の契約書のなかに、ベンダが作成した成果物が、「知的財産権を侵害しないこと”保証する”」条項があったのです。

通常、ベンダ側が作成する契約書では、むしろ「知的財産権を侵害しないことを”保証しない”」内容とするべきなのですが、真逆の内容となっていたのです。

この契約書は、一応は専門家に依頼して作成してもらったものなのですが、こうした、依頼者にとって不利な内容となることもあります。

雛形を使う場合は優劣を見極める

このように、契約書の雛形には、必ず立場の優劣があります。

作成者の意図から、ある程度は推測できるとはいえ、最終的には、自分の目で見て判断する必要があります。

このため、契約書の雛形を使う際には、その雛形全体や個々の契約条件がどちらの当事者にとって有利にできているかを見極めなくてはなりません。

契約書の雛形の優劣を見極めるには、個々の契約条項の意図することを、正確な理解が必要です。

そうしないと、意図せずに、不利な内容の契約を締結してしまうことになりかねません。

ポイント

  • 契約書がどちらの当事者にとって有利かは、作成者の意図からある程度推測できる。
  • 業界団体が作成した契約書は、所属する企業にとって有利なものが多い。
  • 役所が作成した契約書は、規制される企業にとって不利なものが多い。
  • 作成者不詳の契約書は、優劣関係を見極めにくい。
  • 契約書の雛形を使う場合は、優劣を見極めたうえで、自社にとって有利なものを使う。
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ビジネスモデルに合わせて雛形を修正・調整する

契約の実態と雛形の内容の乖離を埋める

不利な内容の雛形を使わないためにも、雛形の契約書を使う場合、自社にとって有利な内容のものを使う必要があります。

また、いくら有利な内容とはいえ、間違っても、雛形の契約書をそのまま使ってはいけません。

契約書の雛形をそのまま使ってはいけない理由は?リスクやデメリットは?

また、雛形に書いている内容を実際の取引きに落とし込む作業、または、逆に、実際の取引きを契約書として文章化する作業も必要です。

つまり、取引内容と雛形に書いている内容の乖離を埋めるように、雛形の契約書を修正・調整していくことになります。

こうした雛形の修正・調整するには、雛形に書いている契約条件と、契約を交わそうとしている実際の契約条件の両方に精通していなければなりません。

雛形の修正・調整には高い契約実務の能力が必須

このように、雛形の契約書を修正するには、高い契約実務の能力が必要となります。

また、単に契約書が書けるだけではなく、実際の契約内容を正確に把握する能力も必要となります。

場合によっては、間違った(特に違法な)契約内容を修正できる能力まで必要となります。

逆に、こうした能力がある者が雛形を修正・調整しないと、知らず知らずのうちに、自社にとって不利な契約内容としてしまうことになります。

ポイント

  • 雛形の契約書をそのまま使うのではなく、契約の実態と雛形の内容の乖離を埋める必要がある。
  • 雛形の修正・調整には、高い契約実務の能力が必須となる。
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雛形の契約書は単に有利にすればいいわけではない

一方的に有利な契約は下請法・独占禁止法違反

なお、実際に雛形の契約書を修正・調整する際には、単に自社にとって一方的に有利な内容にすればいい、というわけではありません。

あまりに一方的に有利な内容は、場合によっては法律違反となります。

特に、下請法が適用される企業間取引で、親事業者の側の場合は、あまりに有利な内容は、下請法違反となります。

また、下請法が適用されなくても、独占禁止法の優越的地位の濫用により、一方的に有利な内容は、違法となります。

一方的に有利な契約は消費者契約法違反

企業間取引ではなく、消費者向けの契約の場合であっても違法となることがあります。

具体的には、企業と消費者との契約には、どのような取引であっても、消費者契約法が適用されます。

この消費者契約法により、企業側にとって一方的に有利な契約内容は、無効となることがあります。

なお、消費者契約法以外にも、消費者保護の法律(例:特定商取引法)はありますので、こうした法律への配慮が必要となります。

一方的に有利な契約は労働基準法違反

さらに、企業と労働者の契約では、各種労働法により、企業の側が大幅に規制されていて、契約上の立場としては、非常に不利な立場となっています。

逆に、労働者の側は、非常に強力に保護されていて、少なくとも法律上は、非常に有利な立場となっています。

具体的には、主に労働基準法や労働契約法によって、労働契約・雇用契約は、非常に厳しく制限されています。

このため、企業の側が、一方的に有利な内容の労働契約書・雇用契約書を作成しても、無効となるどころか、最悪の場合、罰則が科されることがあります。

ポイント

  • 企業間取引では、一方的に有利な契約は、下請法・独占禁止法違反となる。
  • 企業と消費者との取引では、企業の側にとって一方的に有利な契約は、消費者契約法違反となる。
  • 労働契約・雇用契約では、企業の側ににとって一方的に有利な契約は、労働基準法や労働契約法に違反する。