- 収入印紙を貼らなければいけない契約書に収入印紙を貼っていないと、その契約は無効になるのでしょうか?また、脱税のペナルティはどうなっているのでしょうか?
- 契約書に収入印紙を貼っていなくても、そのこと自体は、契約の成立には影響を与えません。このため、他の理由でその契約が無効とならない限り、収入印紙を貼っていなくても、契約は有効に成立します。
ただし、この場合は、本来必要な印紙税に加えて、ペナルティとして、2倍(一定の条件のものとで10%)の過怠税を納付しなければなりません。
このページでは、当事務所によく寄せられるご質問である、収入印紙がない契約書の有効性について、簡単にわかりやすく解説します。
そもそも、契約は、契約自由の原則により、原則として口頭でも成立するものです。
また、収入印紙を貼るべきかどうかは、印紙税法という税法上の問題であり、契約の成立や有効性という民事上の問題とは別の話です。
このため、収入印紙の有無と契約の成立や有効性は、まったく関係がありません。
ただし、必要な収入印紙を貼っていない場合は、脱税となるため、一定のペナルティが課されます。
このページでは、このような収入印紙が貼られていない契約書の有効性や印紙税の取扱いについて、解説しています。
収入印紙が無くても契約は無効にはならない
印紙税はあくまで印紙税法の話
収入印紙が貼られていない契約書は、どのように取扱われるのでしょうか?
そもそも、契約書の中には、収入印紙を貼らなければならないものと、収入印紙を貼らなくていいものがあります。
前者を課税文書、後者を非課税文書または不課税文書といいます。
どの文書が課税文書に該当するかどうかは、印紙税法という、税法によって決まっています。
契約が有効かどうかは民事上の話
これに対し、契約が有効かどうかは、民法をはじめとした、民事上の法律によって決まります。
つまり、契約が有効に成立するかどうかは、あくまで民事上の問題であって、税法は何も関係がありません。
このため、たとえ必要な収入印紙が貼られていなかったとしても、その契約自体は、有効に成立します。
逆に、民法やその他の法律によって、無効となる契約は、たとえ収入印紙が貼られていれも、無効です。
口頭の契約には収入印紙は必要ない
契約自由の原則により、契約自体は、原則として口頭で成立するものです。
そして、収入印紙は、契約書を作成した場合にのみ、貼る必要があります。
…契約書とは、契約証書、協定書、約定書その他名称のいかんを問わず、契約(その予約を含みます。以下同じ。)の成立若しくは更改又は契約の内容の変更若しくは補充の事実(以下「契約の成立等」といいます。)を証すべき文書をいい、念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書又は契約の当事者の全部若しくは一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することになっているものも含まれます。
引用元: No.7117 契約書の意義|国税庁
口頭で成立する契約にもかかわらず、「収入印紙を貼っていない」という理由で、契約が成立しない、あるいは無効となるのは、おかしな話です。
ポイント
- 契約書に収入印紙が貼られていなくても、その契約は無効にはならない。
- 契約の有効性民事上の話であり、税法上の話である収入印紙の有無は関係がない。
印紙税の「脱税」があった場合のペナルティは?
収入印紙を貼らずに税務調査で発覚したら3倍の負担(印紙税+2倍の過怠税)
次に、印紙税法上の問題ですが、税務調査で(準)委任契約書に貼る必要がある収入印紙が貼られていないことが発覚した場合、本来必要な印紙税に加えて、その2倍の金額の過怠税を負担しなければなりません(印紙税法第20条第1項)。
つまり、この場合は、本来必要な印紙税の都合3倍の金額を税務署に収めなければなりません。
ただし、次の条件のもとで、税務署長に対して自己申告した場合は、この過怠税は、印紙税の10%まで減額されます(同第2項)。
過怠税が10%に減額される条件
- 納税地の所轄税務署長に申し出ること。
- 印紙税法施行令第19条に規定する申出書で申し出ること。
- 税務調査による過怠税の賦課を予見した申出でないこと。
収入印紙に消印がない場合は2倍の負担
また、収入印紙を貼っているにもかかわらず、消印を押していない場合は、本来必要な税額に加えて、同額の過怠税を負担しなければなりません(同第3項)。
つまり、この場合は、本来必要な印紙税の都合2倍の金額を税務署に収めなければなりません。
ちなみに、収入印紙は、消印の押印のほか、署名によって消すこともできます。
印紙税法施行令第5条(印紙を消す方法)
課税文書の作成者は、法第8条第2項の規定により印紙を消す場合には、自己又はその代理人(法人の代表者を含む。)、使用人その他の従業者の印章又は署名で消さなければならない。
過怠税は必要経費に参入できない
なお、過怠税は、いわゆる経費に算入できませんので、ご注意ください。
…なお、過怠税は、その全額が法人税の損金や所得税の必要経費には算入されませんのでご注意ください。
引用元: No.7131 過怠税について|国税庁
ポイント
- 収入印紙が貼られてないことが税務調査で発覚した場合は、本来の印紙税に加えて2倍の金額の過怠税が課される。
- 収入印紙が貼られていても、消印が押されていない場合は、本来の印紙税に加えて同額の過怠税が課される。
- 収入印紙は消印だけではなく署名でも消すことができる。
- 過怠税は経費算入できない。