完全合意条項・完全合意事項は、契約書に記載している内容を最終的な合意事項として確定させる条項です。
これは、逆に言えば、契約書に記載していない内容は、それまでの契約交渉でどのような交渉があったとしても、契約内容から”排除された”ことを意味します。
このため、完全合意条項・完全合意事項が規定された契約では、合意内容がすべて契約内容に反映されているかどうか、確認する必要があります。
このページでは、こうした完全合意条項・完全合意事項について、解説します。
完全合意条項・完全合意事項とは
【意味・定義】完全合意条項・完全合意事項とは?
完全合意条項・完全合意事項とは、作成された契約書が完全なものであることを規定する条項です。
ただし、その本質は、契約書に記載されていない事項を契約内容から排除することを目的とした条項です。
【意味・定義】完全合意条項・完全合意事項とは?
「完全合意条項」「完全合意事項」とは、契約書に記載された契約内容が完全なものであることを規定し、それまでの契約交渉においてなされた当事者の合意のうち、契約書に記載されていないものを排除するための条項のこと。
完全合意条項・完全合意事項は、主に国際取引の契約において使用される条項です。
ただ、最近では、国内取引の契約にも規定されることが増えています。
完全合意条項・完全合意事項の記載例・書き方・例文
完全合意条項・完全合意事項は、次のように規定します。
【契約条項の書き方・記載例・具体例】完全合意事項に関する条項
第○条(完全合意事項)
本契約は、本契約に関する当事者間の完全な合意と了解を取り決めたものであって、口頭によるものと書面によるものとを問わず、本契約による合意以前に成立した当事者の合意、了解、意図などのすべては、失効する。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
ポイント
- 「完全合意条項」「完全合意事項」とは、契約書に記載された契約内容が完全なものであることを規定した条項。
- 完全合意条項は、それまでの契約交渉においてなされた当事者の合意のうち、契約書に記載されていないものを排除するたことを目的としている。
完全合意は契約外の合意を「排除する」ための条項
完全合意条項・完全合意事項は契約書が完全である規定ではない
完全合意条項・完全合意事項は、契約書に記載された内容が完全であることを規定する条項です。
これ自体は、わざわざ契約の中で規定するまでもなく、当然の内容です。
実は、完全合意条項・完全合意事項は、この「契約の完全性」そのものが重要なのではなく、逆の意味が重要となります。
つまり、逆に、契約書に記載されていない内容については、その契約成立前に、口頭・書面・メールなどにより(別の)合意があったとしても、失効します。
契約成立前の合意は失効し排除される
このように、完全合意条項・完全合意事項の本質は、契約に規定がない、契約成立前の合意について、失効させ、排除することにあります。
完全合意条項・完全合意事項が規定された契約では、契約書に記載されていない合意はすべて排除されてしまいます。
契約書を作成する理由・目的
契約成立前の口頭や書面での合意を排除するために、完全合意条項を規定した契約書が必要となるから。
たとえその合意が、口頭や電話での簡単な合意であろうと、厳格な手続きのもとで取交された予備的合意書、議事録、念書、覚書などの書面での合意であってもです。
このため、完全合意条項・完全合意事項が規定された契約では、契約書のドラフトをリーガルチェックする際、すべての合意事項が規定されているか、念入りにチェックする必要があります。
完全合意条項・完全合意事項がないと不安定な契約となる
逆に、完全合意条項・完全合意事項の規定がないと、契約自体が、非常に不安定なものとなります。
一般的には、契約書を取交した取引で裁判となった場合、その契約書の解釈を中心に、裁判を争うことにあります。
この際、完全合意条項・完全合意事項がある場合、少なくとも、契約締結前の合意を主張の根拠とするのは、難しくなります。
逆にいえば、完全合意条項・完全合意事項がない場合、契約締結前の合意であっても、主張の根拠としやすくなります。
このため、契約書に書かれている合意以外にも合意が存在する可能性があることになり、非常に不安定なものとなります。
ポイント
- 完全合意条項・完全合意事項は、契約書が完全であることを規定するものではなく、契約書以外の合意を「排除する」ための条項。
- 完全合意条項・完全合意事項が規定された場合、契約成立前の合意は、口頭によるものであろうと、書面によるものであろうと、失効し、排除される。
- 完全合意条項・完全合意事項がない契約は、不安定な契約となる。