このページでは、弁護士等の専門家が監修・作成した雛形の契約書の注意点・リスク・デメリットについて解説しています。

一部の有償・無償のサービスでは、弁護士をはじめとした、専門家が監修・作成した契約書の雛形が配布されることがあります。

こうした契約書の雛形は、少なくとも、最低限の質が担保されていますし、中には、詳細に作り込まれた、非常に高品質なものもあります。

このため、一般的な雛形に比べると、比較的リスクは低いといえます。

しかしながら、いくら弁護士等の専門家が監修・作成した雛形とはいえ、原理的に完璧な契約書にはなりえません。

このページでは、こうした弁護士等の専門家が監修・作成した契約書の雛形の注意点・リスク・デメリットについて、わかりやすく解説しています。




契約実務の能力が高くても完璧な雛形は作れない

「弁護士監修」「弁護士作成」でも完璧ではない

一部の有償・無償のサービスでは、弁護士監修や弁護士作成を売りにした契約書の雛形が提供されていることがあります。

こうした雛形は、さすがにインターネットに出回っている一般の無料の雛形に比べて、品質が高いものが多いです。

ただ、残念ながら、こうした雛形の契約書も、完璧なものとはいえません。

実は、どんなに優秀な弁護士であっても、オーダーメイドの契約書であれ、雛形の契約書であれ、完璧な契約書を作ることはできません。

雛形では契約書の質・精度に限界がある

「完璧な契約書」は、理論上は作成できるものですが、現実的には、難しいものです。

個々の案件ごとにオーダーメイドで作成した契約書であっても、すべての事態を想定しきれませんので、完璧なものはできません。

ましてや、雛形の契約書を作成する場合は、どのような契約で使われるのか想定はしますが、事前にすべてを把握はできません。

このため、どうしても契約書としての質や精度には限界があります。

雛形では契約内容に合わせた最適化ができない

契約書は、そもそも実態としての契約内容に合わせて作成するものです。

逆にいえば、事前に契約内容が把握されずに作成された雛形の契約書では、実際の契約内容に合っていないのは当然のことです。

このため、どんなに優秀で、契約実務の能力・経験が豊富な弁護士であっても、完璧な雛形の契約書は作れないのです。

雛形の契約書は、せいぜい、その契約における一般的な契約内容=最大公約数的な内容を規定できる程度です。

ポイント
  • 「弁護士監修」「弁護士作成」でも、雛形である以上、完璧な契約書ではない。
  • 雛形では、オーダーメイドの契約書と違って、契約書の質・精度に限界がある。
  • 雛形では、事前に個々の企業間取引の契約内容を把握できないため、取引の内容に合わせた最適化ができない。





弁護士監修・作成の雛形はそのまま使わない

弁護士監修・作成の契約書の雛形は土台・たたき台にする

繰り返しになりますが、弁護士監修・作成の契約書の雛形は、一般の契約書に比べて高品質な場合が多いですが、個々の案件に最適化されていません。

このため、いくら弁護士監修・作成のものとはいえ、雛形をそのまま使ってはいけません。

こうした雛形は、土台・たたき台にしつつ、実際の取引の契約内容に適合するように、適宜契約条項を修正・調整して使います。

つまり、弁護士監修・作成の契約書の雛形は、土台やたたき台として活用するべきものです。

雛形の修正・調整後は必ずリーガルチェックを受ける

いくら弁護士が監修・作成した契約書の雛形とはいえ、修正・調整をした場合は、必ず専門家のリーガルチェックを受けてください。

契約書の契約条項は、一見して簡単に書かれているようなものであっても、実は、隠された意図がある場合もあります。

こうした契約条項を安易に修正・調整してしまうと、契約条項として機能しなくなったり、他の契約条項に悪影響を与えることがあります。

このような修正・調整の影響は、それなりの専門知識と経験がある者のリーガルチェックでないと、なかなか見抜くことはできません。

専門家にリーガルチェックを依頼する理由・目的

専門家に修正・調整した雛形の契約書のリーガルチェックを依頼した場合、修正・調整によって機能しなくなった部分や悪影響が与える内容について、確認とアドバイスを受けられるから。

ポイント
  • 弁護士監修・作成の雛形は、そのまま使ってはいけない。
  • 弁護士監修・作成の契約書の雛形は、あくまで土台・たたき台として活用する。
  • 契約書の雛形の修正・調整後は、必ず専門家によるリーガルチェックを受ける。





専門家に雛形の修正・調整を依頼する

一般的な雛形の持ち込み・修正・調整は嫌がられる

また、弁護士監修・作成の契約書の雛形を使うのであれば、できれば、外部の専門家に修正・調整を依頼してみてください。

一般的に、契約書の作成を専門にしている弁護士・行政書士等の専門家は、持ち込まれた雛形の修正・調整のご依頼は、あまり受けたがりません。

このため、たいていの場合は、「一から作ったほうが安いですし、時間もかかりませんよ」と新規の契約書作成のご依頼に結びつけたがります。

これは、何も売上を上げようとして、このような提案をしているわけではありません。

ほとんどの一般的な雛形は、根本的な問題が多すぎて、そもそも修正・調整をするくらいなら、最初から作ったほうがマシなレベルのものが多いからです。

弁護士監修・作成の雛形であれば対応してもらえる

これに対し、弁護士監修・作成の雛形であれば、一般的な雛形に比べて、修正・調整を想定しているものもあります。

また、ものによっては、拡張性も考慮されているものもあり、多少であれば、加筆や追記もできるようになっている場合もあります。

少なくとも、「一から作ったほうがマシ」というレベルのものは、まずありません。

このため、あとからリーガルチェックを受けるくらいであれば、最初から、弁護士・行政書士等の外部の専門家に雛形の修正・調整を依頼してみてください。

ポイント
  • 弁護士監修・作成の雛形を土台・たたき台にして、専門家に雛形の修正・調整を依頼する。
  • 弁護士事務所・行政書士事務所等への一般的な雛形の持ち込み・修正・調整は、嫌がられることが多い。
  • 弁護士監修・作成の雛形であれば、持ち込み・修正・調整に対応してもらえる可能性が高い。