契約書の本文は、前文の後に、「第1条」から始まる部分のことをいいます。
本文には、契約内容を契約条項として記載します。
この本文こそが、いわば契約書の本体であり、最も重要な箇所になります。
ですから、契約書の作成の際には、本文に最も注力します。
契約書の本文とは?
契約書の本文は契約条項を規定する最も重要な箇所
契約書の本文は、前文の後、つまり第1条から始まる、契約条項が記載された箇所のことです。
【意味・定義】本文(契約書)とは?
契約書の本文とは、前文の後に書かれている第1条から始まる文章であって、契約内容が記載されたものをいう。
他の箇所とは違って、本文は、契約内容の解釈に直接影響を与えます。
このため、契約書のなかでは、本文こそが最も重要な箇所です。
契約書の作成やリーガルチェックの際にも、本文に最も注力して作成・確認をします。
本文は条・項・号(細分)で記載する
契約書の本文は、個々の条文によって構成されています。
このうち、個別の条項は「条」といいます。
また、それぞれの条の段落は「項」といいます。
そして、それぞれの項の中で、事柄を列記するものを「号」といいます。
号の中でさらに細かく事柄を列挙するものを「細分」(いわゆる「ア、イ、ウ」または「イ、ロ、ハ」)といいます。
契約書の本文は、これらの条項を階層的に記載していきます。
条・項・号(細分)の呼び方・書き方
本文の条文は、次のような構成となります。
【契約条項の書き方・記載例・具体例】契約書の本文の記載例
第1条(見出し)
1 第1項。
(1)第1条第1号
(2)第1条第2号
ア 第1条第1項第2号ア
イ 第1条第1項第2号イ
2 第2項。
(1)第2項第1号
ア 第2項第1号ア
イ 第2条第1号イ
(2)第2項第2号
条は、「第1条」「第2条」のように、正式には「第」をつけて表現します(「前条」「次条」等の場合は別)。これは、項、号の場合も同様です。
項、号、細分では、同じ条の中では、「第1項」「第2項」「前項」「次項」「第1項第2号」「第2項第5号」「第1項第2号ア」「第2項第5号ウ」のように条番号を省略して表現します。
また、いずれも、他の条で引用する場合は、「第2条第1項」、「第2条第1項第2号」、「第2条第2項第5号ウ」のように、条番号を記載します。
ポイント
- 本文は、契約条項を規定する箇所であり、契約書のなかでは最も重要な箇所。
- 本文は、条・項・号(細分)で、階層的に記載していく。
- 条番号は、同じ条の中では省略し、他の条の中では記載する。
契約書の条の意味・定義と記載例・書き方
【意味・定義】契約書における条とは?
条はひとまとまりの契約条項のこと
条とは、「第◯条」のように、条番号が記載された、ひとまとまりの契約条項の全体のことです。
【意味・定義】条とは?
条とは、条番号が記載された、ひとつの契約条項全体をいう。
条番号は、横書きの契約書では、「第1条」のように、アラビア数字で記載します。
漢数字でも間違いはないのですが、一般的に、横書きの契約書はアラビア数字、縦書きの契約書は漢数字とすることが多いです(これは法律の表記でも同様です)。
条の前後のカッコ書きの部分は見出し
また、上記の記載例で、カッコ書きになっている箇所を「見出し」といいます。
【意味・定義】見出し(契約書)とは?
契約書における見出しとは、条の概要をカッコ書きで表記したものをいう。
見出しは、条番号の前と後のいずれかにつけますが、どちらでもかまいません。
また、一般的に、見出しは、条文の解釈には影響を与えないとされています。
ただ、だからといって、条文の内容と一致しない見出しや、ましてや条文の内容に反する見出しをつけてはいけません。
なお、法律の書き方としては、見出しが条番号の前にあるものが正式な書き方となります。
条の記載例・書き方
【契約条項の書き方・記載例・具体例】支払方法に関する条項
(支払方法)
第○条
甲は、乙に対し、乙が指定する銀行口座に現金を振り込むことにより、料金を支払うものとする。この場合、銀行口座への振込みに要する費用は、甲の負担とする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
【契約条項の書き方・記載例・具体例】支払方法に関する条項
第○条(支払方法)
甲は、乙に対し、乙が指定する銀行口座に現金を振り込むことにより、料金を支払うものとする。この場合、銀行口座への振込みに要する費用は、甲の負担とする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
なお、管理人は、契約書の行数の削減のため、条番号の後に見出しを書く方法を推奨しています。
ポイント
- 条は、条番号が記載された、ひとつの契約条項全体のこと。
- 条番号はアラビア数字で記載する。
- 見出しは、条の概要をカッコ書きで表記したもの。
- 通常、見出しは条文の解釈には影響を与えない。
- 見出しは、条の前後どちらに記載しても構わない。
契約書の項の意味・定義と記載例・書き方
【意味・定義】項は条のなかの個々の段落のこと
項とは、個々の条のなかの、ひとつの段落のことです。
【意味・定義】項とは?
項とは、条のなかの、文章となっている、個々の段落をいう。
項は必ず文章で書く
項は、条のなかに必ずひとつはある段落であり、文章で記載されています。
このため、必ず主語と述語があり、最後は、句点(。)で終わっていなければなりません。
1項だけの条では、項番号は省略されますが、2項以上の条では、各項に項番号が記載されます。
項の記載例・書き方
【契約条項の書き方・記載例・具体例】支払方法に関する条項
第○条(支払方法)
甲は、乙に対し、乙が指定する銀行口座に現金を振り込むことにより、料金を支払うものとする。この場合、銀行口座への振込みに要する費用は、甲の負担とする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
【契約条項の書き方・記載例・具体例】支払方法に関する条項
第○条(支払方法)
1 甲は、乙に対し、乙が指定する銀行口座に現金を振り込むことにより、料金を支払うものとする。
2 前項の銀行口座への振込みに要する費用は、甲の負担とする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
項番号はアラビア数字で記載しピリオドは打たない
なお、項番号は、横書きの契約書の場合は、「1」「2」のように、アラビア数字単体で記載します。
条番号同様に、漢数字でも間違いはないのですが、一般的に、横書きの契約書はアラビア数字、縦書きの契約書は漢数字とすることが多いです(これは法律の表記でも同様です)。
また、一般的には、日本語の契約書では、「1.」「2.」のように、ピリオドは打ちません(打っていても間違いではありません)。
2項以上の場合、第1項の項番号を記載する書き方と、記載しない書き方があります。
【契約条項の書き方・記載例・具体例】支払方法に関する条項
第○条(支払方法)
1 甲は、乙に対し、乙が指定する銀行口座に現金を振り込むことにより、料金を支払うものとする。
2 前項の銀行口座への振込みに要する費用は、甲の負担とする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
【契約条項の書き方・記載例・具体例】支払方法に関する条項
(支払方法)
第○条 甲は、乙に対し、乙が指定する銀行口座に現金を振り込むことにより、料金を支払うものとする。
2 前項の銀行口座への振込みに要する費用は、甲の負担とする。甲は、乙に対し、乙が指定する銀行口座に現金を振り込むことにより、料金を支払うものとする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
第1項の項番号は、省略しても記載してもかまいません。
法律の書き方としては、後者の第1項の項番号を書かないもの(かつ、見出しが条番号の前にあるもの)が正式な書き方となります。
管理人は、項番号が分かりやすいといる理由と、デザインが統一されている理由から、第1項の前者の項番号を書く方法を推奨しています。
項における段とは?
1項の中で、2以上の複数の文章がある場合は、各文章のことを「段」といいます。
【意味・定義】段(契約書)とは?
契約書における段とは、1項の中に2以上の複数の文章がある場合における、個々の文章をいう。
この段が2つの場合は、前半の段を「前段」といい、後半の段を「後段」といいます。
【契約条項の書き方・記載例・具体例】支払方法に関する条項
第○条(支払方法)
甲は、乙に対し、乙が指定する銀行口座に現金を振り込むことにより、料金を支払うものとする。この場合、銀行口座への振込みに要する費用は、甲の負担とする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
例えば、上記の記載例では、「甲は、…支払うものとする。」の部分が前段であり、「この場合、…負担とする。」の部分が後段となります。
これに対し、3以上の文章がある場合は、「第1段、第2段、第3段…」と表現します。
項における本文・ただし書きとは
項のなかで2以上の文章が記載されているもののうち、2つめ以降の文章において、「ただし、」で始まるものを「ただし書き」といい、その前の文章を「本文」といいます。
【意味・定義】本文・ただし書きとは?
契約書の項における本文・ただし書きとは、それぞれ次のものをいう。
- 本文とは、本文の前に記載されている部分のこと。
- ただし書きとは、「ただし、」から始まる、本文の後に記載されている部分のこと。
【契約条項の書き方・記載例・具体例】支払方法に関する条項
第○条(支払方法)
委託者は、受託者に対し、受託者が指定する銀行口座に現金を振り込むことにより、報酬を支払うものとする。ただし、銀行口座への振込みに要する費用は、受託者の負担とする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
例えば、上記の記載例では、「委託者は、…支払うものとする。」の部分が本文であり、「この場合、…負担とする。」の部分がただし書きとなります。
なお、この記載例で前段・後段ではなくただし書きとした理由は、民法上、報酬の支払いに要する費用は債務者(上記の例では委託者)の負担(民法第485条)となるべきところ、特約として債権者(上記の例では受託者)の負担とする規定だからです。
ただし、前段・後段として記載しても間違いではありません。
ポイント
- 項とは、条のなかの、文章となっている、個々の段落のこと。
- 項は必ず文章で書く。
- 項番号はアラビア数字で記載し、ピリオドは打たない。
- 1項のみの場合は、項番号は記載しない。
- 2項以上の場合は、第1項を記載する方法と記載しない方法がある。
- 段は、1項の中に2以上の複数の文章がある場合における、個々の文章のこと。
- 項における本文は、ただし書きの前の文章のこと。
- 項におけるただし書きは、「ただし、」から始まる、本文の後に記載されている部分のこと。
号の意味・定義と記載例・書き方
【意味・定義】号とは?
号は項の下に列記される事柄
号とは、項の規定のなかで、列記された事柄のことです。
【意味・定義】号とは?
号とは、項の規定において、列記された2以上の事柄をいう。
号は文章ではなく名詞または体言止めの名詞節で書く
号は、項の内容として、項の文章の後に列記される事柄のことで、2以上の事柄ある場合に使う書き方です。
項とは違って、号は、名詞または体言止めの名詞節で記載します。
ありがちなミスですが、一般的には、契約書では、号の書き方としては、文章を書くことはありません。
号の文末は原則として句点(。)を打たないが「こと」「もの」の後には打つ
また、これもありがちなミスですが、号は、末尾に句点(。)を記載しません。
これは、句点(。)が文章の末尾に記載するものであり、名詞または体言止めの名詞節である号には句点(。)は必要ないからです。
ただし、例外として、「こと」と「もの」が末尾となる場合に限っては、慣例として句点(。)を記載ます。
号の記載例・書き方
【契約条項の書き方・記載例・具体例】業務提供の方法に関する条項
第○条(業務提供の方法)
乙は、甲に対し、次の各号に規定する方法により、業務を提供するものとする。
(1)電話(IP電話を含む。)
(2)電子メールの送信
(3)前項各号に規定するもののほか、乙が指定する方法
(※コンサルティング契約における業務提供の方法の例。乙=経営コンサルタント。便宜上、表現は簡略化しています)
【契約条項の書き方・記載例・具体例】秘密情報の例外に関する条項
第○条(秘密情報の例外)
本契約において、次の情報は、秘密情報に含まれない。
(1)秘密保持義務を負うことなくすでに保有しているもの。
(2)秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手したもの。
(3)相手方から提供を受けた情報によらず、独自に開発したもの。
(4)本契約及び個別契約に違反することなく、かつ、受領の前後を問わず公知となったもの。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
号番号はカッコ書きのアラビア数字で記載する
横書きの契約書の場合、号は、「(1)」「(2)」のようなカッコ書きのアラビア数字で記載します。
条番号や号番号同様に、漢数字でも間違いはないのですが、一般的に、横書きの契約書はアラビア数字、縦書きの契約書は漢数字とすることが多いです(これは法律の表記でも同様です)。
また、一般的な日本語の契約書では、「(a)」「(b)」のようなアルファベット表記はしません。
各号列記とは?
上記の(1)~(3)の個々の部分が「号」となりますが、(1)~(3)全体の部分のことを「各号列記」といいます。
【意味・定義】各号列記とは?
各号列記とは、号全体のひとまとまりをいう。
柱書きとは?
また、上記の「乙は、…提供するものとする」のみの部分を、「柱書き」といいます。
【意味・定義】柱書きとは?
柱書きとは、項から各号列記を除いた部分をいう。
つまり、項から各号列記を除いた部分が柱書きとなります。
なお、「柱書き」は法令用語ではありますが、法律上は使用されません。
ポイント
- 号とは、項の規定において、列記された事柄のこと。
- 号は文章ではなく名詞または体言止めの名詞節で書く。
- 号の文末は原則として句点(。)を打たないが、例外として「もの」「こと」の後には句点(。)を打つ。
- 号番号はカッコ書きのアラビア数字で書く。
- 各号列記とは、号全体のひとまとまりのこと。
- 柱書きとは、項から各号列記を除いた部分のこと。
(号の)細分の意味・定義と記載例・書き方
【意味・定義】号の細分:号の規定をさらに細分化した事柄
(号の)細分とは、号の規定のなかで列記された事柄を、さらに細分化した事柄のことです。
【意味・定義】(号の)細分とは?
(号の)細分とは、号の規定において列記された事柄のうち、さらに細分化した2以上の事柄をいう。
細分は、号と同様に、2以上の事柄がある場合に使い、文章ではなく、名詞または体言止めの名詞節で記載します。
横書きの契約書の場合、号の細分の番号は、数字ではなく、アイウ形式か、イロハ形式のどちらかです。
(号の)細分の記載例・書き方
契約条項の記載例・書き方
第○条(業務提供の方法)
乙は、甲に対し、次の各号に規定する方法により、業務を提供するものとする。
(1)電話(IP電話を含む。)
(2)電子メールの送信
(3)次のいずれかのSNSまたはチャットツールであって、甲および乙が使用について合意したもの
ア Facebook
イ Twitter
ウ LINE
エ ChatWork
オ Slack
カ アからオまでに規定するもののほか、甲から使用の提案があったもの
(4)前項各号に規定するもののほか、乙が指定する方法
(※コンサルティング契約における業務提供の方法の例。乙=経営コンサルタント。便宜上、表現は簡略化しています)
上記の記載例では、ア~カに該当する個々の部分が細分となります。
この他の書き方は、号に準じます(ただし、「細分列記」とは表現しません)。
ポイント
- (号の)細分とは、号の規定において列記された事柄のうち、さらに細分化した2以上の事柄のこと。
- 細分の番号は、数字ではなく、アイウ形式か、イロハ形式のどちらか。
- 細分の書き方は号に準じる。