契約書は、「契約自由の原則」により、法律の規制がなく、原則としては、自由に書くことができます。

このため、書式や書き方については、特に法律上のルールや決まった書式・書き方はありません(ただし、一部の法律で規制がある特殊な契約書を除きます)。

ただ、これは、あくまで法律上のルールがないだけであり、一般的な契約書には、慣例となっている書式・書き方・ルールがあります。

こうした慣例となっている書式・書き方・ルールに従った書き方の契約書でないと、実は大きなリスクとなる場合もあります。

このページでは、こうした契約書の書式の全体像や、契約書の書き方のルールについて、解説します。

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契約書の書式の全体像

一般的な契約書は、次のような全体像・構成・書式となっています。

契約条項の記載例・書き方

取引基本契約【タイトル】

株式会社◯◯商事(以下、「甲」という。)と株式会社◯◯工業(以下、「乙」という。)とは【当事者】、物品の製造請負契約の基本的事項を規定することを目的として、この契約を締結する。【前文】

第1条(目的)

本契約は、次の各号の事項を規定することを目的とする。

(1)甲が乙に対し、食品の製造請負を注文し、受注者がこれを請負うこと。

(2)甲が乙に対し、前号の製造請負の報酬を支払うこと。

(途中省略)

第50条(専属的合意管轄)

本契約にもとづく紛争については、第一審の東京地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする。【本文】

本契約の成立を証するため、本書2通が作成され、甲乙それぞれが1通を保有する。【後文】

平成30年4月30日【作成年月日】

甲:東京都◯◯区◯◯町◯◯    

株式会社◯◯商事     

代表取締役 佐藤 一郎 

乙:神奈川県◯◯市◯◯区◯◯町◯◯

株式会社◯◯工業     

代表取締役 鈴木 太郎 

【署名欄】

(※人名は架空のものです)

(※便宜上、表現は簡略化しています)

それぞれ、簡単に見ていきましょう。

契約書のタイトル・表題の書き方・注意点は?

【意味・定義】契約書のタイトル・表題とは?

契約書のタイトル・表題は、契約書の表紙、または冒頭に表示される、契約の名称のことです。

契約書のタイトル・表題とは

契約書のタイトル・表題とは、契約書の表紙または冒頭に表示される契約の名称をいう。

実は、契約書のタイトルは・表題は、契約内容の解釈にはほとんど影響を与えません。

このため、法的には、タイトル・表題は、さほど重要な部分ではありません。

逆にいえば、タイトルで契約内容を判断すると、誤った判断をする可能性もあります。

契約書のタイトル・表題の具体例・書き方・ルール

契約書のタイトル・表題は、契約の概略がわかるようにつけます。

具体的には、次のような例があります。

契約書のタイトル・表題の具体例

  • ◯◯売買契約書(◯◯には売買の対象物を記入する)
  • ◯◯製造請負契約書(◯◯には製造請負の製品を記入する)
  • 建物建設工事請負契約書
  • ◯◯業務委託契約書(◯◯には業務内容を記入する)
  • ◯◯賃貸借契約書(◯◯には賃貸借の対象物を記入する)
  • ◯◯ライセンス契約書(◯◯には対象となる知的財産権を記入する)

なお、このほか、契約書のタイトル・表題につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

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契約当事者の書き方・規定のしかたやルールは?

契約書では契約当事者を特定する書き方が極めて重要

契約書では、当事者を表記する際、しっかりと当事者を特定しなければなりません。

ですから、契約書の前文での契約当事者の書き方と、署名欄での署名(サイン)・記名押印が極めて重要となります。

場合によっては、どのような立場で締結しているのかを明記します。

特に、個人事業者が契約当事者の場合、事業者・消費者いずれの立場で契約を締結するのかを明らかにします。

契約当事者の書き方の具体例・書き方・ルールは?

契約当事者は、具体的には、次の書き方で記載します。

契約条項の記載例・書き方(法人が契約当事者の場合)

取引基本契約

株式会社◯◯商事(以下、「甲」という。)と株式会社◯◯工業(以下、「乙」という。)とは、物品の製造請負契約の基本的事項を規定することを目的として、この契約を締結する。

(※便宜上、表現は簡略化しています)

契約条項の記載例・書き方(一般消費者が契約当事者の場合)

金銭消費貸借契約

山田一郎(以下、「甲」という。)と佐藤花子(以下、「乙」という。)とは、次のとおり、金銭消費貸借契約を締結する。

(※便宜上、表現は簡略化しています)

契約条項の記載例・書き方(個人事業者が契約当事者の場合)

売買契約

株式会社◯◯商事(以下、「甲」という。)と個人事業者である鈴木商店こと鈴木太郎(以下、「乙」という。)とは、次のとおり、売買契約を締結する。

(※便宜上、表現は簡略化しています)

このように、契約当事者は、主に前文の中で明記し、併せて、当事者の略称を規定します。

そして、署名欄で、当事者の住所・名称(商号・法人名・屋号等)・署名者の役職と氏名を明記することで、当事者を特定します。

このほか、契約書の当事者の書き方・規定につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

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契約書の前文の書式・書き方・ルールは?

契約書の前文の書式・書き方の具体例

前文(ぜんぶん・まえぶん)は、タイトル・表題の次に書かれている文章のことです。

前文には、主に次の内容を規定します。

前文の記載内容

  • 契約当事者
  • 契約の概要
  • (場合によっては)契約が及ぶ範囲
  • (場合によっては)契約に締結に至った経緯

前文の書き方は、具体的には、次のとおりです。

契約条項の記載例・書き方

取引基本契約

株式会社◯◯商事(以下、「甲」という。)と株式会社◯◯工業(以下、「乙」という。)とは、物品の製造請負契約の基本的事項を規定することを目的として、この契約を締結する。

(※製造請負についての取引基本契約の前文の例です。便宜上、表現は簡略化しています)

前文は契約の解釈には影響を与えない

契約の前文は、あくまで契約の概略について記載したものです。

このため、前文は、直接的に契約の解釈に影響を与えるものではありません。

ただし、契約条項に記載がないトラブルが発生した場合は、前文の記載がひとつの判断材料となる可能性はあります。

このほか、契約書の前文の書式や書き方につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

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契約書の本文の書式・書き方は?

契約書の本文=契約内容=最も重要な箇所

契約書の本文は、前文の後、つまり第1条から始まる、契約条項が記載された箇所のことです。

契約書の本文は、契約条項そのものであり、契約内容を規定し、解釈する箇所です。

契約書の本文は、言うまでもなく、契約書の記載の中では最も重要な箇所です。

当然、契約書の作成・リーガルチェックの際には、最も注力するべき箇所です。

契約書の本文の条・項・号(細分)の呼び方・書き方・ルール

契約書の本文の条文は、次のような構成となります。

契約条項の記載例・書き方

第1条(見出し)

1 第1項。

(1)第1条第1号

(2)第1条第2号

ア 第1条第1項第2号ア

イ 第1条第1項第2号イ

2 第2項。

(1)第2項第1号

ア 第2項第1号ア

イ 第2条第1号イ

(2)第2項第2号

法律上、特に上記の例の書き方でなくてもかまいません。

ただ、慣例としては、上記の書き方が一種のルールになっています。

このほか、契約書の本文の書式や書き方につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

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契約書の後文の書式・書き方は?

契約書の作成数・所持者・原本または写しの数を記載する

後文(ごぶん・あとぶん)は、契約書の本文の後、署名欄・作成年月日の直前に書かれている文章のことです。

後文には、主に次の内容を規定します。

後文の記載内容

  • 契約書の作成数
  • 各契約当事者の契約書の所持数
  • (場合によっては)各契約当事者が所持する契約書が原本か写しか
  • (場合によっては)署名者に契約締結権がある旨の宣誓

一般的な契約書では、契約書を当事者の数だけ作成し、それぞれの当事者が1通保有するよう、後文に記載ます。

ただし、この他の作成のしかたや、後文の書き方もあります。

契約書の後文の書式・書き方の具体例

一般的な後文の記載例

一般的な後文は、具体的には、次のように記載します。

契約条項の記載例・書き方

本契約の成立を証するため、本書2通が作成され、甲乙それぞれが1通を保有する。

(※便宜上、表現は簡略化しています)

原本1通・写し1通とする場合の記載例

原本が1通、写しが1通の場合は、次のように記載します。

契約条項の記載例・書き方

本契約の成立を証するため、本書の原本1通・写し1通が作成され、甲が原本保有し、および乙が写しをを保有する。

(※便宜上、表現は簡略化しています)

このほか、契約書の後文の書式や書き方につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

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契約書の作成年月日の書式・書き方・ルールは?

意外と重要となる契約書の作成年月日

作成年月日には、文字どおり、契約書を作成した日を記載します。

契約での特約がない限り、一般的な契約書の作成年月日は、契約の成立の日とされます。

契約書の作成年月日は、継続的契約の契約期間の起算点となったり、適用される法律の根拠となったりします。

この点から、契約書の作成年月日は、意外と重要となる場合があります。

契約書の作成年月日の書式・書き方の具体例

作成年月日は、通常は、署名欄の署名箇所の直前か、署名欄が記載されたページと同じページのどこかに記載されています。

一般的な株式会社同士の契約書では、作成年月日は、次のような記載とします。

契約条項の記載例・書き方

平成30年4月30日

東京都◯◯区◯◯町◯◯    

株式会社佐藤商事     

代表取締役 佐藤 一郎 

神奈川県◯◯市◯◯区◯◯町◯◯

鈴木工業株式会社     

代表取締役 鈴木 太郎 

(※商号は架空のものです)

特に署名欄で作成年月日を左に寄せるルールがあるわけではありませんので、右に寄せても結構です。

また、住所や署名箇所も、特に右に寄せるルールがあるわけではありません。

このほか、契約書の作成年月日の書式や書き方につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

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署名欄のサイン・書き方・押印のしかたは?

署名欄は当事者の特定と契約締結の意思の確認のために極めて重要

署名欄は、契約書の末尾(または冒頭)にある、契約当事者が署名する欄です。

署名欄には、当事者の住所、(事業者の場合は)法人名・商号・屋号、署名者の(事業者の場合は)役職・氏名を記載し、押印します。

署名欄は、「当事者を特定する」という点と、「当事者の契約締結の意思を確定する」という2点において、非常に重要となります。

このため、署名欄は、契約書の取り交わしの手続きにおいては、最も重要な箇所になります。

署名欄の書式・書き方の具体例

一般的な株式会社同士の契約書では、署名欄は、次のような記載とします。

契約条項の記載例・書き方

平成30年4月30日

東京都◯◯区◯◯町◯◯    

株式会社佐藤商事     

代表取締役 佐藤 一郎 

神奈川県◯◯市◯◯区◯◯町◯◯

鈴木工業株式会社     

代表取締役 鈴木 太郎 

(※商号は架空のものです)

このほか、契約書の署名欄のサインのしかた・書き方・押印のしかたにつきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

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慣例・ルールに従っていない書き方の契約書のリスクは?

契約書は「日本語」が使われていない

このように、契約書の書き方には、一種の慣例・ルールがあります。

極端な言い方になりますが、契約書は、通常の日本語では書かれていません。

契約書は、法律用語を使い、独特な慣例・ルールに従って書くものですので、通常の日本語を使って書きません。

実は、この点は、契約実務では非常に重要になります。

法律用語を使わず慣例・ルールに従わないとどうなる?

契約書で法律用語が使われ、慣例・ルールに従った書き方がされている場合、専門家がリーガルチェクの際に、「相手も専門家が作成している」と判断します。

ところが、契約書で法律用語が使われておらず、慣例・ルールに従った書き方もされていないと、リーガルチェクの際に、「もしかしたら相手には専門家いないかも?」と判断します。

つまり、相手方に対し、ヘタに慣例・ルールに従っていない契約書を提示してしまうと、「ウチには弁護士などの専門家はついていませんよ」というメッセージを伝えることになります。

慣例・ルールに従っていない契約書のリスク

法律用語が使われず、慣例・ルールに従った書き方がされていない契約書は、「専門家がついていない」というメッセージとなる。

これでは、契約交渉で、非常に不利な状況になってしまいます。

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【補足】一部の法律では記載事項や書式が規制されている

「契約自由の原則」にも例外がある

このように、一般的な契約書では、あくまで慣例としてではありますが、書式が決まっています。

ただ、必ずこの書式でなければならない、というわけではありません。

契約には、「契約自由の原則」があり、その中のひとつの「方式自由の原則」により、書式は自由に決められます。

もっとも、一部の特殊な契約の場合、法律の規制により、契約書の書き方や書式に制限があります。

【規制1】必須の記載事項がある場合

これらの契約書の規制のうち、よくあるものが、契約内容の記載事項が決められている場合です。

代表的な例が、以下のとおりです。

法律によって必須記載事項がある契約書

  • 一部の業務委託契約書等(下請法)
  • 建設工事請負契約書(建設業法)
  • 家内労働手帳(家内労働法)
  • 建設工事設計受託契約書・建設工事監理受託契約書(建築士法)
  • 雇用契約書・労働契約書・労働条件通知書(労働基準法・労働契約法)
  • 労働者派遣契約書(労働者派遣業法)
  • 一部の消費者向けの契約書(特定商取引法・割賦販売法)
  • 金融商品取引契約書(金融商品取引法等)
  • 投資顧問契約書(同上)
  • 探偵契約書(探偵業法)
  • 住宅宿泊管理受託契約書(住宅宿泊事業法)
  • 保険契約書・保険約款(保険業法)
  • 信託契約書(信託業法)
  • マンション管理委託契約書(マンション管理適正化法)
  • 不動産特定共同事業契約書不動産特定共同事業法)
  • ゴルフ場会員契約書(ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律)
  • 商品投資顧問契約書(商品投資に係る事業の規制に関する法律)
  • 定期建物賃貸借契約書(借地借家法)
  • 特定商品等預託等取引契約書(特定商品等の預託等取引契約に関する法律)
  • 貸金業者による金銭消費貸借契約書(貸金業法)
  • 一部のフランチャイズ契約書(中小小売商業振興法)
  • 積立式宅地建物販売契約書(積立式宅地建物販売業法)
  • 警備契約書(警備業法)
  • 熱供給契約書・約款(熱供給事業法)
  • 電力小売供給契約書・約款(電気事業法)
  • ガス小売供給契約書・約款(ガス事業法)
  • 産業廃棄物処理契約書(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)
  • 不動産の売買・交換・賃貸に関する契約書(宅建業法)
  • 企画旅行契約書・手配旅行契約書等(旅行業法)
  • 福祉サービス利用契約書(社会福祉法)
  • 商品取引契約書(商品先物取引法)
  • 有料放送の役務の提供に関する契約書(放送法)
  • 雇入契約書(船員法)

これらの法律の大半は、契約書の作成・交付がなければ、罰則が課されますので、注意が必要です。

【規制2】書式に制限がある場合

また、あまり多くはありませんが、主に消費者の保護を目的として、書式に制限がある契約書もあります。

代表的な例が、以下のとおりです。

法律によって書式に規制がある契約書

  • 一部の消費者向けの契約書(特定商取引法施行規則・割賦販売法施行規則)
  • 貸金業者による金銭消費貸借契約書その他の書面(貸金業法施行規則)
  • 保険契約書・保険約款(中小企業等協同組合法施行規則・認可特定保険業者等に関する命令)
  • 金融商品取引契約書(銀行法施行規則・信用金庫法施行規則・中小企業等協同組合法施行規則・保険業法施行規則・信託業法施行規則・金融機関の信託業務の兼営等に関する法律施行規則・労働金庫法施行規則・農林中央金庫法施行規則・協同組合による金融事業に関する法律施行規則・水産業協同組合法施行規則・農業協同組合及び農業協同組合連合会の信用事業に関する命令・漁業協同組合等の信用事業等に関する命令)
  • 共済契約書・特定共済契約書(水産業協同組合法施行規則・農業協同組合法施行規則)
  • 商品取引契約書(商品先物取引法施行規則)
  • ゴルフ場会員契約書(ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律施行規則)
  • 商品投資顧問契約書(商品投資顧問業者の業務に関する省令)
  • 特定商品等預託等取引契約(特定商品等の預託等取引契約に関する法律施行規則)
  • 電気通信役務の提供に関する契約書(電気通信事業法施行規則)

これらの規定は、主に重要な契約条項に関する注意喚起のため、文字の大きさを一定以上(日本工業規格の8ポイントまたは12ポイント)としています。

また、ものによっては、枠の記載を義務づけていたり、文字の色(赤)を指定するものもあります。

当然ながら、こうした規制に反する契約書を使用した場合は、罰則が課されます。