「収入印紙に割印を押す」という表現は、契約書に関わる人であれば、誰しも一度は聞いたことがあるでしょう。

また、次のような疑問を持つこともあると思います。

収入印紙と「割印」にありがちな疑問

  • 収入印紙の割印を押す位置はどこ?左右どちらに押すの?
  • 収入印紙の割印は誰のものを押すの?それとも片方だけでいい?
  • 収入印紙の割印は甲乙2社の双方全員のものが必要?
  • 収入印紙に割印がない契約書は有効?
  • 契約の相手方には、収入印紙にどちらの割印を押した契約書を渡す・返送するべき?
  • 収入印紙に押す割印は実印でなければならない?
  • 収入印紙に押す割印は角印・角印・認め印・シャチハタでもいい?
  • 収入印紙の割印は、保証人も押す必要がある?
  • 三者間契約・三面契約の場合、収入印紙の割印は、甲乙丙3社全員のものが必要?
  • 収入印紙に割印を失敗した場合、どうしたらいい?
  • 間違った印紙税の計算で収入印紙に割印を押した場合、税務署から還付を受ける方法は?
  • 控え・コピーの契約書には収入印紙や割印は必要?
  • 割印を押す必要のない収入印紙・契約書は?

実は、これらは、すべて間違っている表現です。

収入印紙に押す印鑑・ハンコは、正確には「消印」といいます。

これだけだと、単なる間違いで済む話ですが、「収入印紙にへの押印は、割印ではなく消印である」というのは、実は、契約実務では、ごく基本的な知識です。

つまり、うっかり収入印紙の話題で「割印」という表現を使ってしまうと、相手方に(この人は契約書の基本的なことがわかっていないのでは?)という印象を与えるリスクがあります。

このため、収入印紙については、「割印」という表現を使うべきではありません。

このページでは、こうした「収入印紙と割印・消印」の誤解とリスクについて、解説します。

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収入印紙に押すのは割印ではなく消印

割印・消印とは?その違いは?

【意味・定義】割印とは?

収入印紙に押すのは、消印であって、割印ではありません。

そもそも、割印は、2以上の複数の書面にまたがって押される印章(押印)のことです。

割印の定義

割印とは、2以上の複数の書面が同一であること、または関連することを意味するために、それぞれにまたがって押される、印章が割れた押印のことをいう。

つまり、割印は、そもそも書面に押すものであり、収入印紙に押すものではないのです。

【意味・定義】消印とは?

収入印紙に押す印章は、正確には「消印」です。

消印は、印紙を「消す」ために押される印章(押印)のことです。

消印の定義

消印とは、収入印紙を消すために、契約書と印紙にまがたって押される印章(押印)のことをいう。

なぜ「消印」と表現されるのかといえば、これは、印紙税法に「印紙を消さなければならない」という表現があるからです。

印紙税法第8条(印紙による納付等)

1 課税文書の作成者は、次条から第12条までの規定の適用を受ける場合を除き、当該課税文書に課されるべき印紙税に相当する金額の印紙(以下「相当印紙」という。)を、当該課税文書の作成の時までに、当該課税文書にはり付ける方法により、印紙税を納付しなければならない。

2 課税文書の作成者は、前項の規定により当該課税文書に印紙をはり付ける場合には、政令で定めるところにより、当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない。

収入印紙は消印ではなく署名でも消すことができる

ちなみに、収入印紙は、印鑑・ハンコではなく、署名で消すこともできます。

印紙税法施行令第5条(印紙を消す方法)

課税文書の作成者は、法第8条第2項の規定により印紙を消す場合には、自己又はその代理人(法人の代表者を含む。)、使用人その他の従業者の印章又は署名で消さなければならない。

つまり、手元に印鑑・ハンコがなくても、署名=サインをすることで、収入印紙を消すことができます。

この場合も、消印と同じように、印紙と印紙が貼られている契約書の部分にまたがるように、署名=サインをすることで、印紙を消します。

ポイント

  • 割印とは、2以上の複数の書面が同一であること、または関連することを意味するために、それぞれにまたがって押される、印章が割れた押印のこと。
  • 消印とは、収入印紙を消すために、契約書と印紙にまがたって押される印章(押印)のこと。
  • 収入印紙に押すのは消印であって、割印ではない。
  • 収入印紙は消印ではなく署名=サインでも消すことができる。
  • 署名で印紙を消す場合も、契約書と印紙にまたがって署名=サインする。

絶対に言ってはいけない「収入印紙に割印を押す」

「収入印紙=消印」は基本的な契約実務の知識

このように、収入印紙に押すべき押印は、消印であって、割印ではありません。

消印と割印は、文字では同じような表現に見えますが、その意味はまったく別物です。

しかも、こうした消印・割印の意味や違いは、契約実務のごく基本的・初歩的な知識です。

消印・割印は、日々の業務で契約書に触れている社会人であれば、まず間違えることはありません。

相手に「基本的な契約実務の知識がない」ことがバレる

他方で、あまり契約実務に馴染みがない方ほど、「収入印紙に割印を押す」という誤った表現をしてしまいがちです。

実は、この誤用自体は、特に契約実務において悪影響があるわけではありません。

しかし、相手方の担当者が経験豊富な場合は、こうした「ちょっとした誤用」は、自社にとって間接的な悪影響となる場合があります。

というのも、こうした「収入印紙に割印を押す」という明らかな誤用があった場合、相手方は、(もしかしたら、この人は消印と割印の区別も知らないのでは?)と疑います。

つまり、「収入印紙に割印を押す」という表現によって、相手方に「契約実務の基本的な知識・経験がない」ことがバレる可能性があります。

印鑑・ハンコの押し方・印章は種類が多く誤用しがち

印鑑・ハンコの押し方や印章については、「押印(捺印)、消印、契印、割印、捨印、止印、拇印」のように、いろんな種類があります。

これらの用語は、すべて別々の意味があり、それぞれ正確に使うべきものです。

逆にいえば、これらの用語の意味について、すべてを正確に知らないと、使い分けることができません。

こういった、印鑑・ハンコの押し方や印章が多いことが、「収入印紙に割印を押す」という誤用の原因となっています。

印鑑・ハンコの押し方・印章の表現は正確にする

経験豊富なベテランの専門家や法務担当者は、自身ではこれらの用語を正確に使いますし、他人が間違って使っているのを見逃しません。

すでに触れたように、万が一、これらの用語を間違って使った場合は、契約実務の基本的な知識・経験がないことがバレてしまいます。

実は、こうした、わずかな法律用語の誤用が、契約実務の能力を見破る重要な判断材料となる場合が多いものです。

ですから、契約交渉の際に、専門家や法務担当者を相手にする場合は、印鑑・ハンコに関する用語は、正確に使ってください。