こんにちは。契約書作成専門・小山内行政書士事務所代表の小山内です。

このページでは、相手方が作成して提示してくるファーストドラフトのリスクについて解説しています。

相手方がファーストドラフトを作成する場合、契約交渉の主導権を握られる可能性があります。

このため、本来であれば、ファーストドラフトは、自社の側で作成して提示するべきです。

ただ、契約交渉の立場上、どうしても相手方からのファーストドラフトの提示が避けられない場合もあります。

このページでは、こうした相手方から提示されるファーストドラフトのリスクについて、解説します。

なお、自社が提示するファーストドラフトにつきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

自社が作成して提示するファーストドラフトのメリット・デメリット・リスクは?

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ファーストドラフトは交渉の主導権が握られる

【意味・定義】ファーストドラフトとは?

ファーストドラフト(first draft)とは、文字どおりでは「最初の草稿」という意味ですが、契約実務では、最初に提示される契約書の草稿のことを意味します。

ファーストドラフト(first draft)の定義

ファーストドラフト(first draft)とは、契約実務において、一方の当事者から、相手方に対し提示される、最初の契約書の草稿のことをいう。

一般的な契約交渉では、以下のいずれかの時点で、契約当事者のどちらかからファーストドラフトが提示されます。

ファーストドラフトが提示される時点

  • 契約交渉のごく初期の段階:ファーストドラフトをたたき台にして交渉する場合。
  • 契約交渉の途中の段階:契約交渉とバトルオブフォーム(Battle of form。書式の戦い)を平行する場合。
  • 契約交渉の終盤:契約内容がほぼ確定し、契約書の文言の交渉に移行する場合。
  • 契約交渉の終了時:契約書がすでにあり、かつ、契約書の修正が想定されていない場合。

相手方のファーストドラフトにより契約交渉の主導権を握られる

相手方がファーストドラフトを用意する場合は、自社で用意する場合と違って、相手方が自由に契約内容を規定します。

一般的に、契約交渉の主導権は、ファーストドラフトを提示する側が握ります。

こうした事情があるため、海外では、ファーストドラフトの提示は、契約交渉上の立場(バーゲニングポジション)が優位な方が提示することが多いです。

一方、日本では、必ずしも契約交渉上の立場が優位でなくても、ファーストドラフトを提示できる場合もあります。

契約書をどちらの契約当事者が用意するべきかについては、詳しくは、次のページをご覧ください。

契約書はどちらが用意するべきなのでしょうか?

ポイント

  • ファーストドラフト(first draft)とは、契約実務において、一方の当事者から、相手方に対し提示される、最初の契約書の草稿のこと。
  • 相手方からファーストドラフトを提示されることにより契約交渉の主導権を握られるリスクがある。

ファーストドラフトは受入れなければならない?

企業間取引では契約交渉の余地はない?

一般的に、日本では、特に大企業と中小企業の取引では、契約交渉の立場が優位なほうが、ファーストドラフトを用意して、そのままサインすることが多いです。

特に、中堅以上の法人と個人事業者との取引きでは、ありがちな話です。

このような場合は、契約書に記載している契約条件どおりで契約を結ぶか、さもなければ契約は見送るか、というふたつにひとつの結論がほとんどです。

つまり、契約交渉の余地がまったくない、ということです。

ファーストドラフトは必ずしも受入れる必要はない

では、相手方からファーストドラフを提示された場合、その内容をすべて受入れなければならないのでしょうか?

もちろん、そんなことはありません。

ファーストドラフをたたき台にして、契約交渉をしても問題ありません。

ただし、管理人の経験上、一般的な日本の企業では、次のような事情により、契約書の内容については、交渉自体が難しい場合があります。

日本の企業間取引で契約書に関する交渉が難しい事情

  • 契約交渉の経験自体が乏しく、そもそも契約交渉そのものをしたくない。
  • 自社で契約書を修正できるスキル・体制がない。
  • 契約書の修正に対応してくれる外部の専門家との顧問契約等の関係がない。

こうした事情により、相手方がファーストドラフトを提示してきた場合、交渉の余地がないこともあります。

この場合は、相手方のファーストドラフトを受入れるかどうかの判断だけでも、慎重にしておく必要があります。

ポイント

  • 日本では、企業間の契約書に関する交渉はあまりない。
  • 相手方のファーストドラフトは、必ずしも受入れる必要はない。
  • ただし、日本の企業では、そもそも契約書の修正の意思や能力の問題で、契約書の修正が難しい場合が多い。
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相手方のファーストドラフトは自社にとって不利なもの

相手方作成のファーストドラフトは相手方に有利に出来ている

相手方のファーストドラフトは、相手方にとって有利な内容になっているものです。

当たり前の話ですが、相手方のファーストドラフトは、相手方に有利に出来ています。

わざわざ自社で作成するなり、費用を負担して外部の専門家に作成してもらうのに、相手方にとって不利な内容の契約書を作るわけがありません。

これは、裏を返せば、相手方から提示されたファーストドラフトは、必ず自社にとって不利に出来ている、ということです。

このため、相手方から提示されたファーストドラフトのリーガルチェックでは、どの点が自社にとって不利なのかを見極めないといけません。

専門家は一般の方が見抜けない巧妙な契約書を作る

相手方のファーストドラフトが一般の方の作成によるものであれば、比較的簡単に不利な点を見抜くことができるかもしれません。

しかし、専門家が作ったファーストドラフトであれば、そうそう簡単には見抜くことはできません。

相手方の契約書の専門家は、巧妙な書き方によって、一見してもわからないように、相手方にとって有利=自社にとって不利な内容とします。

このように、相手方から提示された、巧妙なファーストドラフトの不利な点を見抜くことができなければ、契約交渉を通じて、その不利な点を是正することができません。

その結果、不利な内容での契約が結ばれてしまうことになります。

自社でも専門家にリスクを見抜いてもらう

契約書のリーガルチェックの難しいところは、「知識がないと見抜けない」にもかかわらず、「日本語で書いているからなんとなくわかる」気になってしまう、という点です。

例えば、契約書の表現としては、「その他の…」と「その他…」は、別々の意味となりますが、こうしたことは、知らなければ見抜けません。

このため、相手方からファーストドラフトを提示された場合、自社に経験を積んだベテランの法務担当者がいないときは、必ず外部の専門家のリーガルチェックを受けるべきです。

たとえ契約交渉の余地がなかったとしても、ファーストドラフトのリスクの内容も把握せずに、契約を締結してはいけません。

ポイント

  • 相手方が提示してくるファーストドラフトは、当然、相手方に有利に出来ている。
  • 専門家は、一般の方には見抜けないような、巧妙な内容の契約書を作成する。
  • 相手方が提示してきたファーストドラフトは、必ず専門家にリーガルチェックをしてもらい、一般の方では気づけない内容について確認する。
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相手方のファーストドラフトを逆手に取る

ファーストドラフトは相手方の契約実務の能力を把握できる

もっとも、相手方からファーストドラフトが提示されたからといって、必ずしもデメリットばかりとは限りません。

ファーストドラフトを相手が提示してきた場合、そのファーストドラフトを分析することで、ある程度の確度で、相手方の契約実務の能力やバックオフィスの体制が推測できます。

特に、経験を積んだ契約実務の専門家であれば、契約書の内容を見れば、相手方の契約書の作成担当者が、どの程度のレベルであるのか、たちどころにわかります。

このため、相手方にファーストドラフトを提示されたからといって、悲観することなく、じっくりと腰を据えて対応してください。

敢えて相手方にファーストドラフトを提示させる方法もある

こうした事情があるため、場合によっては、敢えて相手方にファーストドラフトを提示させる、というやり方もあります。

特に、相手方が本業としている取引きの契約では、通常は相手方がすでに契約書を用意しているはずですので、まずはファーストドラフトの提示を求めるべきです。

この際、例えば、ファーストドラフトの提示を求めたにもかかわらず、提示までに時間がかかっている場合は、慌ててファーストドラフトを作成している可能性があります。

こうした場合は、「本業の取引きの契約書であるにもかかわらず、あらかじめ用意していない」という推測が成り立ちます。

このように、敢えてファーストドラフトを相手方に提示させることにより、むしろ自社が契約交渉で優位に立つこともできます。

必ず専門家のアドバイスを受けながら対応する

もっとも、敢えて相手方にファーストドラフトを提示させるやり方もまた、専門知識に加えて、ある程度の経験がなければ、上手に対応はできません。

契約交渉が巧妙な企業や、経験を積んだ法務担当者は、ファーストドラフトを提示し、譲歩したフリや騙されたフリをして、上手に契約交渉をまとめてきます。

自社としては、相手方にファーストドラフトを提示させて、交渉の主導権を握っていると思いきや、逆に交渉の主導権を握られていた、ということもあります。

このため、相手方にファーストドラフトを提示させる場合も、必ず専門家による助言を受けながら対応するべきです。

ポイント

  • 相手方がファーストドラフトを提示してきたからといって、必ずしも不利な状況とは限らない。
  • 相手方のファーストドラフトを徹底的に分析に、相手方の契約書の作成担当者や交渉担当者の実力を見極める。
  • 専門家の助言のもと、相手方に主導権を握られないように、契約交渉を進める。