こんにちは。契約書作成専門・小山内行政書士事務所代表の小山内です。

このページでは、個人事業者・フリーランスが契約当事者になる場合における、署名・サインのしかたについて解説しています。

企業間の契約において、相手方が個人事業者・フリーランスが当事者である場合は、企業側としては、その個人事業者・フリーランスが消費者として扱われないよう、署名・サインのしかたには注意しなければいけません。。

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個人事業者・フリーランスの署名・サインのしかた

署名欄には屋号・ペンネーム+代表+氏名

個人事業者・フリーランスの署名・サインでは、署名欄には、必ず屋号「◯◯(屋号)こと◯◯(氏名)」の表記と代表の肩書きと個人の氏名をサインします。

また、押印については、直筆の署名・サインであれば、必ずしも必要ではありませんが、押印するのであれば、個人の実印を押印します。

例えば、鈴木事務所という屋号の個人事業者で、代表者の氏名が鈴木太郎さんの場合は、その署名・サインは、次のとおりです。

鈴木事務所の署名欄の署名方法
〇〇県〇〇市〇〇町◯-◯-◯
鈴木事務所こと鈴木太郎 代表 鈴木一郎 

「◯◯(屋号)こと◯◯(氏名)」が重要

屋号単体では契約当事者を特定できない

個人事業者・フリーランスによる署名・サインで重要となるのが、屋号(ペンネーム・変名・雅号等を含む)の表記です。

署名欄への署名・サインは、当事者を特定できることが重要となります。

個人事業者・フリーランスの屋号は、商号とは違い、第三者が確認できるような登記は、されていません(屋号の登記制度自体はあります)。

このため、個人名で当事者を特定する方法しかありません。

屋号+個人名で契約当事者を特定する

また、屋号単体では、原則としてどのような屋号であれ、自由に名乗ることができます。

それこそ、「鈴木事務所」や「佐藤商店」などは、全国に数えきれないほどあるでしょう。

このため、「◯◯(屋号)こと◯◯(氏名)」という表記で、当事者を特定できるように記載します。

もっとも、これでも当事者を特定したことにはならないため、住所や押印によって、さらに特定できるようにします。

印鑑は個人の実印で押印してもらう

印鑑については、理論上は、直筆の署名・サインがあれば、特に押印がなくても、契約自体は成立します。

ただ、相手が個人事業者・フリーランスの場合は、重要な契約であれば、より確実に契約書が証拠となるように、実印の押印をしてもらうべきです。

この場合、印鑑登録証明書の提出を求めることで、その押印が実印によるものである証拠となります。

法人の場合と違って、個人の場合は、印鑑登録証明書も比較的入手しやすいものです。

このため、重要な契約の手続きの際には、できるだけ個人事業者・フリーランスの方に提出を求めるべきです。

ポイント

  • 個人事業者・フリーランスが契約当事者になる場合は、署名欄には「◯◯屋号こと◯◯(氏名)+代表+氏名」。
  • 個人事業者・フリーランスが相手方の場合、印鑑は、個人の実印で押印してもらう。
  • 重要な契約の場合は、印鑑登録証明書を提出してもらう。
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個人事業者は消費者として保護されない

個人事業者・フリーランスはあくまで事業者

個人事業者・フリーランスは、事業上の契約では、当然ながら事業者として扱われます。

このため、個人事業者・フリーランスは、消費者とは扱われず、消費者を保護する法律は、適用されません。

消費者を保護する法律の具体例としては、消費者保護法、特定商取引法などがあります。

これらは、当然、事業者である個人事業者・フリーランスには適用されません。
(一部特定商取引法が適用される場合があります。)

消費者保護の法律やクーリングオフによる保護は適用対象外

例えば、個人事業者・フリーランスは、クーリングオフなどの消費者を保護している制度は、ほとんど活用できません。

たまに個人事業者・フリーランスの方から、フランチャイズ契約のような事業者間の契約をクーリングオフしたいという相談が寄せられることがありますが、こうした事業者間の契約は、クーリングオフができません。

ただし、一部の法律は、個人事業者・フリーランスであっても、クーリングオフができる場合があります。

例えば、特定商取引法の業務提供誘引販売取引に該当する場合などは、個人事業者・フリーランスでも、クーリングオフができる場合もあります。

契約に関する法律も商法が優先して適用される

契約に関しても、民法よりも商法が優先して適用されます。

商法は、商人(=事業者)のための法律です。契約についての規定も、民法よりもシビアな内容の法律になっています。

例えば、民法が適用される場合は、発注者による契約の申込みを放置していても、契約が自動的に成立することはありません。

しかし、商法が適用される場合は、発注者による契約の申込みを放置していると、契約が自動的に成立することがあります(商法第509条)。

個人事業者・フリーランスは法的には大企業とも対等の立場

いかに個人事業者・フリーランスとはいえ、法的には、大企業と対等として扱われます。

いくら規模の違いがあるとはいえ、お互いにビジネスをおこなう事業者です。

一部の例外(下請法や独占禁止法が適用される場合など)を除いて、契約についての知識や経験の差は、企業努力の差によるものです。

原則として、企業努力の差が法律によって是正されるということは、まずありません。

ポイント

  • 個人事業者・フリーランスは、あくまで事業者であり、消費者ではない。
  • 個人事業者・フリーランスは、消費者保護の法律やクーリングオフによる保護は、原則として適用対象外となる。
  • ただし、一部の法律にもとづくクーリングオフについては、事業者にも適用される。
  • 契約に関する法律は、商法が優先して適用される。
  • 個人事業者・フリーランスは、法的には大企業とも対等の立場となる。ただし、下請法や独占禁止法が適用される場合は、これらの法律により保護されることもある。
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相手が個人事業者・フリーランスの場合は要注意

消費者保護の法律が適用されないように注意する

このように、個人事業者・フリーランスには、消費者を保護する法律が適用されません。

逆に、事業者ではなく消費者として扱われると、消費者を保護する法律が適用される危険性があるということです。

この点は、特に相手が個人事業者・フリーランスの場合は、注意が必要です。

契約の相手が個人事業者・フリーランスである場合は、冒頭でも触れたとおり、代表者の氏名だけでなく、屋号も記載してもらって、相手側が消費者として扱われないようにします。

契約書には個人事業者であることを明記する

また、契約書の記載内容としても、前文、本文中、後文、署名欄などに、相手が個人事業者・フリーランスであることを明記するべきです。

こうすることで、契約書が、相手方も個人事業者・フリーランスとしての意識で契約を締結した、ひとつの証拠となります。

なお、個人事業者・フリーランスを相手にした業務委託契約では、単に相手が個人事業者・フリーランスである旨を契約書に記載しただけでは、業務委託契約ではなく、雇用契約・労働契約とみなされるリスクがあります。

この点につきましては、詳しくは、姉妹サイト「業務委託契約の達人」の「個人事業者・フリーランスとの業務委託契約と雇用契約・労働契約の15の違い」をご覧ください。

ポイント

  • 相手方が個人事業者・フリーランスの場合は、消費者保護の法律が適用されないように注意する。
  • 個人事業者・フリーランスと取交す契約書には、相手方が個人事業者・フリーランスであることを明記する。
  • ただし、個人事業者・フリーランスが相手方となる業務委託契約では、単に契約書にその旨を規定したとしても、雇用契約・労働契約とみなされる可能性もある。