このページでは、契約書への署名者・サイナーのうち、株式会社の代表取締役について解説しています。

代表取締役による署名・サインは、当然ながら、株式会社などの法人の署名・サインとして、有効となります。

代表取締役の署名・サインがある契約書は、法人として、契約が締結されたものとみなされます。

このページでは、こうした代表取締役による、契約書への署名・サインについて、わかりやすく解説します




具体的な代表取締役による署名・サインのしかた

署名欄には商号+代表取締役肩書き+代表取締役氏名

株式会社と契約を結ぶ場合、署名欄には、必ず商号と代表取締役の肩書きと代表取締役の氏名サインをしてもらいます。

例えば、山田産業株式会社という会社の代表取締役の鈴木一郎さんが署名・サインをする場合は、次のとおりです。

株式会社の署名欄の署名方法

〇〇県〇〇市〇〇町◯-◯-◯
山田産業株式会社 代表取締役 鈴木一郎 

ポイントは商号・代表取締役(+氏名)・住所の記載

商号を書くことによって、サインをした個人として契約したのではなく、会社と契約したことになります。

また、同様に、代表取締役の資格を書くことによって、サインした者が個人として契約したのではなく、会社の代表取締役として契約したことを意味します。

なお、住所の記載がなくても、理論上は契約は成立しますが、契約当事者を特定するためにも、住所は記載したほうがいいです。

ポイント

会社としての署名・サインは、会社名(商号)+代表取締役(代表権を表す資格・役職)+署名者・サイナーの氏名。





株式会社は代表取締役が代表する

法人は代表権のある個人(自然人)が意思決定をする

株式会社は、法律によって人格を認められた人=法人です。

当たり前のことですが、生身の実体があるわけではありません。

ですから、株式会社は、法人を代表する権利のある個人=自然人が意思決定をする仕組みになっています。

契約書への署名・サインも同様で、法人の代表権がある個人がサインすることになります。

会社法では株式会社は取締役(代表取締役)が代表する

株式会社において、代表権がある者は、代表取締役です。

厳密には、会社法では、原則として、取締役が会社を代表します(会社法第349条第1項本文)。

ただし、例外として、代表取締役が定められている株式会社の場合は、取締役には代表権はありません(会社法第349条第1項ただし書き)。

会社法第349条(株式会社の代表)

1 取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。

2 前項本文の取締役が二人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する。

3 株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。

4 代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

5 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

実際の会社では、会社法とは真逆で、ほとんどの場合は、代表取締役が定められていて、取締役が会社を代表することは、まずありません。

ポイント

会社の代表は代表取締役。





代表取締役の署名・サインか実印の押印とする

契約書への署名・サインはなるべく代表取締役か実印の押印

このように、株式会社を代表するのは、代表取締役です。

このため、相手方が株式会社である場合、契約を締結する際には、代表取締役に署名・サインをしてもらうべきです。

あるいは、直筆での署名・サインでなくても、実印の押印も、代表取締役による署名・サインと同様に法的効果があります。

実印とは、会社設立の際に法務局で登録する印鑑のことです。

会社のものとして有効となる契約書の署名(サイン)と押印

代表取締役の署名・サインか、実印の押印があることで、会社として契約を締結したことになる。

より確実な方法で契約を成立させる

実は、会社として契約を締結する方法は、他にもいろいろあります。

特に、一定以上の権限がある役職の者による署名・サインは、会社法等にもとづき、会社として契約を締結したことになります。

しかし、契約書への署名・サインは、契約を有効に成立させるための、極めて重要な作業です。

このため、より確実な、代表取締役の署名・サインとするべきです。

注目するべきポイントはあくまで「代表取締役」かどうか

ここで注意しておきたいのは、いかにも代表権を持っているかのような肩書きの者であっても、必ずしも代表権を持っているとは限らない、ということです。

例えば、日本の会社には、会長、社長、専務、常務、頭取、顧問、相談役、執行役員のような肩書きがあります。

こういった肩書きは、会社の内部規定で定めた職制に過ぎませんので、法律上の代表権の有無とは関係ありません。

肩書きは法的な意味はない

会長、社長、専務、常務、頭取、顧問、相談役、執行役員などの肩書きは、あくまで社内ルールによるもの。こうした呼び方は法的には意味がない。

注目するべき点は、あくまで代表取締役であるかどうかです。

このため、実際に契約を締結する際には、商業登記を確認して、代表取締役の確認をするべきです。

最も確実なのは実印+印鑑登録証明書

なお、契約実務上、最も確実で安全な調印方法は、実印の押印です。

そして、その実印が本物である証拠として、印鑑登録証明書を提出してもらうのが、最も厳格な契約書の調印手続きとなります。

このため、非常に重要な契約書の調印では、代表取締役同士の署名・サインに加えて、実印の押印と印鑑登録証明書の取交しがおこなわれます。

もっとも、こうした手続きは非常に手間がかかりますので、重要な契約書に限った話になります。

ポイント
  • 会社での契約書への署名・サインは、なるべく代表取締役か実印で対応してもらう。
  • 会社としての契約の締結の方法は他にもあるが、なるべく確実な代表取締役の署名・サインまたは実印で対応してもらう。
  • 契約書への署名・サインで重要なのは、あくまで代表取締役であるかどうか。肩書きよりも代表権の有無を確認する。
  • 重要な契約書の調印では、実印の押印と印鑑登録証明書の提出を求めるべき。