【意味・定義】任意規定(任意法規)とは?

【意味・定義】任意規定とは?

任意規定とは、ある法律の規定に関して、契約当事者による合意がある場合に、その合意のほうが優先される法律の規定をいう。




任意規定は契約当事者の合意=特約を優先する法律の規定

任意規定=契約自由の原則のとおり

任意規定とは、契約当事者の合意(いわゆる特約)のほうが優先される法律の規定のことです。

【意味・定義】任意規定とは?

任意規定とは、ある法律の規定に関して、契約当事者による合意がある場合に、その合意のほうが優先される法律の規定をいう。

任意規定は、「任意法規」と表現することもあります。

いわゆる、「契約自由の原則」のうち、「内容自由の原則」が全面的に当てはまる法律の規定ともいえます。

【意味・定義】契約自由の原則とは?

契約自由の原則とは、契約当事者は、その合意により、契約について自由に決定することができる民法上の原則をいう。

【改正民法対応】契約自由の原則とは?4つの分類と例外をわかりやすく解説

 

任意規定は民法では「公の秩序に関しない規定」のこと

任意規定は、民法では、第91条に明確に規定されています。

民法第91条(任意規定と異なる意思表示)

法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

ここでいう「法令中の公の秩序に関しない規定」が任意規定のことです。

逆に、「法令中の公の秩序に関する規定」が、いわゆる「強行規定」のことです。

【意味・定義】強行規定とは?

強行規定とは、ある法律の規定に関して、契約当事者による合意がある場合であっても、その合意よりも優先される法律の規定をいう。

強行規定・強行法規とは?意味・具体例についてわかりやすく解説

契約書は任意規定を修正するために作成する

契約書を作成するのには、多くの理由がありますが、その中でも特に重要なのが、民法第91条にもとづき、任意規定を修正することです。

契約書を作成する理由・目的

任意規定とは異なる契約内容を合意したい場合は、その証拠として特約で任意規定を修正した契約書が必要となるから。

【改正民法対応】民法・法律と異なる契約内容・特約の作り方・書き方は?

法律上の任意規定は、実際の事業上の取引とは一致していないこともあります。

このため、契約書による任意規定の修正が、非常に重要となります。

ポイント
  • 任意規定は、契約当事者の合意を優先する法律の規定のこと。
  • 強行規定は、契約当事者の合意よりも優先される法律の規定のこと。
  • 契約書は、任意規定を修正するために作成する。





任意規定の条文の具体例は?

任意規定の具体例としては、請負契約における報酬の支払時期があります。

請負契約においては、支払時期は、「仕事の目的物の引渡しと同時」とされています(民法第633条)。

民法第633条(報酬の支払時期)

報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第624条第1項の規定を準用する。

しかし、製造請負契約にせよ、建設工事請負契約にせよ、一般的な事業上の取引きとしての請負契約では、この「仕事の目的物の引渡しと同時」という支払時期は、実態とはかけ離れています。

このため、契約書で任意規定である民法第633条を修正し、前払いや後払い、あるいは一部の分割払いや部分払いなどの特約を規定します。

契約書を作成する理由・目的

物の引渡しを要する請負契約においては、支払時期が「仕事の目的物の引渡しと同時」であることから、前払いや後払いにする場合は、特約を規定した契約書が必要となるから。





なぜ民法には任意規定が多いのか?

民法には「私的自治の原則」があるから

余談ですが、民法の契約に関する条項のほとんどは任意規定とされています。

なぜ民法の契約に関する条項に任意規定が多いのかというと、「原則として、契約関係は、契約当事者によって決められるべきである」という考え方があるからです。

このような考え方を「私的自治の原則」といいます。

【意味・定義】私的自治の原則とは?

私的自治の原則とは、民事上の当事者の合意にもとづく関係=契約関係は、当事者の自治によって決まる原則。

これは、見方を変えれば、「当事者の合意がある場合は、民法の規定よりもその合意を優先するべきである」という考えになります。

このため、民法の契約に関する規定は、当事者の合意が優先される任意規定が多いのです。

私的自治の原則=契約自由の原則

なお、私的自治の原則は、別名「契約自由の原則」といいます。

【意味・定義】契約自由の原則とは?

契約自由の原則とは、契約当事者は、その合意により、契約について自由に決定することができる民法上の原則をいう。

契約自由の原則につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

【改正民法対応】契約自由の原則とは?4つの分類と例外をわかりやすく解説

ポイント
  • 民法の契約に関する規定は、ほとんどが任意規定。
  • なぜ民法の契約に関する規定に任意規定が多いのかといえば、私的自治の原則=契約自由の原則により、民法の規定より当事者の合意が優先されるから。





任意規定と強行規定の違いは特約の優劣

任意規定と強行規定の違いは、当事者間でそれと異なる合意=契約・特約があった場合、どちらが優先されるのか、という点にあります。

すでに触れたとおり、任意規定は、それと異なる合意=契約・特約があった場合、合意=契約のほうが優先されます。

これに対し、強行規定は、それと異なる合意=契約があった場合でも、強行規定=法律のほうが優先されます。

まとめると、これらの優劣関係は、次のとおりです。

任意規定・強行規定・契約内容(当事者間の合意・特約)の優劣

強行規定>契約内容(当事者間の合意・特約)>任意規定





任意規定は有利となるよう修正する

任意規定はあくまで合意がない場合の判断基準

すでに触れたとおり、契約書を作成する目的のひとつに、任意規定の修正があります。

任意規定は、契約書がない場合や、その任意規定に関する合意・契約内容がない場合に適用される、法律の規定です。

こうした任意規定は、必ずしも自社にとって有利な内容とは限りません。

ものによっては、自社にとって不利な内容の任意規定である場合もあります。

ですから、契約書で、自社にとって有利な内容に契約条件を修正しなければなりません。

契約書を作成する理由・目的

法律の内容によっては自社にとって不利な任意規定もあるため、特約としてその任意規定を修正した契約書が必要となるから。

なお、任意規定の修正につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

【改正民法対応】民法・法律と異なる契約内容・特約の作り方・書き方は?

 

法律の規定は任意規定かどうかは明記されていない

ただ、すでに触れたとおり修正できる規定はあくまで任意規定だけです。

たとえ当事者間の合意があったとしても、強行規定については、修正することはできません。

この点について、個々の法律の規定が任意規定であるかどうかは、その条文には、ほとんど明記されていません。

このため、少なくとも、合意しようとする契約内容に、どの法律の規定が適用されるのか、そして、その規定が任意規定なのか強行規定なのかを知らなければ、修正のしようがありません。

ポイント
  • 任意規定は、あくまで合意がない場合の判断基準でしかない。
  • 任意規定は、必ずしも自社にとって有利とは限らない。
  • 自社にとって有利となるように、任意規定は特約で修正する。
  • 法律には任意規定かどうかは明記されていないことが多い。





任意規定・強行規定の見分け方・区別は?

契約に適用される個々の法律・規定を確認する

以上のように、契約書を作成する際には、その契約内容が法律(特に民法)の任意規定・強行規定に違反しないかどうかが重要となります。

このため、実務上は、契約に適用される法律がどの法律であるかの判断が重要となります。

契約に適用される法律一覧(随時更新)

そのうえで、契約条項と法律の条項を照らし合わせ、どの契約条項にど法律の条項が適用されるのかを判断することになります。

こればかりは、それぞれの契約と法律の知識がなければ、判断できません。

任意規定か強行規定かは判例・学説で区別して見分ける

契約条項に適用される法律を特定した後は、法律の条項が任意規定か、または強行規定かを区別して見分けます。

すでに触れたとおり、一部の法律では、個々の条項が強行規定であることが明記されてる場合もあります。

しかしながら、法律によっては、任意規定や強行規定について規定がない場合もあります。

その場合は、契約実務上の任意規定・強行規定の見分け、区別するために、判例と学説を確認することとなります。

任意規定・強行規定は専門家に確認する

このように、契約書を作成する場合、契約内容について、そもそもどの法律が適用されるのかを知らなければ、任意規定・強行規定のチェックのしようがありません。

また、適用される法律がわかったとしても、どの規定が適用されるのか、そしてその規定が任意規定・強行規定のいずれかも、よく調べなければなりません。

こうした重要な確認作業に漏れがあると、契約条項が無効になったり、罰則や行政処分の対象となるリスクがあります。

しかしながら、この確認作業は、契約実務に関する知識・経験がないと、できないものです。

このため、契約書の作成については、外部の専門家による確認や助言を受けながら、進めてください。

ポイント
  • 任意規定・強行規定を区分し、見分けるためには、その契約に適用される法律をのものを知る必要がある。
  • 契約に適用される法律が判明した場合、個々の法律の条項が任意規定か強行規定かは、判例・学説を調べることにより区分し、見分ける。
  • 任意規定・強行規定は、知らなけば対処のしようがないため、なるべく外部の専門家の確認や助言を受ける。





任意規定・任意法規に関するよくある質問

任意規定・任意法規とは何ですか?
任意規定・任意法規とは、ある法律の規定に関して、契約当事者による合意がある場合に、その合意のほうが優先される法律の規定のことです。
任意規定・任意法規の具体例を教えて下さい。
任意規定・任意法規の具体例としては、請負契約における報酬の支払時期を規定した民法第633条などがあります。