【意味・定義】任意規定(任意法規)とは?

任意規定の定義

任意規定とは、ある法律の規定に関して、契約当事者による合意がある場合に、その合意のほうが優先される法律の規定をいう。

強行規定の定義

強行規定とは、ある法律の規定に関して、契約当事者による合意がある場合であっても、その合意よりも優先される法律の規定をいう。

任意規定・強行規定・契約内容(当事者間の合意)の優劣

強行規定>契約内容(当事者間の合意)>任意規定

※強行規定が最も優先的に適用される。

【意味・定義】任意規定(任意法規)とは?

任意規定は契約当事者の合意=特約を優先する法律の規定

任意規定は、契約当事者の合意(いわゆる特約)のほうが優先される法律の規定のことです。

任意規定は、「任意法規」と表現することもあります。

いわゆる、「契約自由の原則」のうち、「内容自由の原則」が全面的に当てはまる法律の規定ともいえます。

契約自由の原則につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

民法では「公の秩序に関しない規定」のこと

任意規定は、民法では、第91条に明確に規定されています。

民法第91条(任意規定と異なる意思表示)

法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

契約書を作成するのには、多くの理由がありますが、その中でも特に重要なのが、民法第91条にもとづき、任意規定を修正することです。

法律上の任意規定は、実際の事業上の取引とは一致していないこともあるため、契約書による任意規定の修正が、非常に重要となります。

任意規定の条文の具体例は?

任意規定の具体例としては、請負契約における報酬の支払時期があります。

請負契約においては、支払時期は、「仕事の目的物の引渡しと同時」とされています(民法第633条)。

民法第633条(報酬の支払時期)

報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。

しかし、製造請負契約にせよ、建設工事請負契約にせよ、一般的な事業上の取引きとしての請負契約では、この「仕事の目的物の引渡しと同時」という支払時期は、実態とはかけ離れています。

このため、契約書で、任意規定である民法第633条を修正し、前払いや後払い、あるいは一部の分割払いや部分払いなどを規定します。

ポイント

  • 任意規定は、契約当事者の合意を優先する法律の規定のこと。
  • 契約書は、任意規定を修正するために作成する。

なぜ民法には任意規定が多いのか?

民法には「私的自治の原則」があるから

余談ですが、民法の契約に関する条項のほとんどは任意規定とされています。

なぜ民法の契約に関する条項に任意規定が多いのかというと、「原則として、契約関係は、契約当事者によって決められるべきである」という考え方があるからです。

このような考え方を「私的自治の原則」といいます。

私的自治の原則の定義

私的自治の原則とは、民事上の当事者の合意にもとづく関係=契約関係は、当事者の自治によって決まる原則。

これは、見方を変えれば、「当事者の合意がある場合は、民法の規定よりもその合意を優先するべきである」という考えになります。

このため、民法の契約に関する規定は、当事者の合意が優先される任意規定が多いのです。

私的自治の原則=契約自由の原則

なお、私的自治の原則は、別名「契約自由の原則」といいます。

契約自由の原則の定義

契約自由の原則とは、契約当事者は、その合意により、契約について自由に決定することができる民法上の原則をいう。

契約自由の原則につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

ポイント

  • 民法の契約に関する規定は、ほとんどが任意規定。
  • なぜ民法の契約に関する規定に任意規定が多いのかといえば、私的自治の原則=契約自由の原則により、民法の規定より当事者の合意が優先されるから。

【意味・定義】強行規定(強行法規)とは?

強行規定は契約当事者の合意よりも優先される法律の規定

強行規定とは、たとえ契約当事者の合意があったとしても、優先される法律の規定のことです。

強行規定は、「強行法規」と表現することもあります。

いわゆる「契約自由の原則」のうち、内容自由の原則の例外に該当する法律の規定ともいえます。

また、民法第91条の表現を引用すれば、”「法令中の公の秩序に関」する規定”ということになります。

強行規定の条文の具体例は?

強行規定の具体例としては、いわゆる「公序良俗」があります。

民法第90条(公序良俗)

公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

例えば、非常に極端な例ですが、殺人の請負契約は、当事者間に合意があったとしても、民法第90条(=強行規定)に違反する契約として無効になります。

一般に、契約に関する規定は、任意規定が多いとされていますが、完全に自由というわけではありません。

特にビジネス上の契約では、重要な契約条項ほど、法律によって規制される傾向があります。

ポイント

強行規定は、契約当事者の合意よりも優先される法律の規定のこと。

任意規定と強行規定の違いは?

任意規定と強行規定の違いは、当事者間でそれと異なる合意=契約があった場合、どちらが優先されるのか、という点にあります。

すでに触れたとおり、任意規定は、それと異なる合意=契約があった場合、合意=契約のほうが優先されます。

これに対し、強行規定は、それと異なる合意=契約があった場合でも、強行規定=法律のほうが優先されます。

まとめると、これらの優劣関係は、次のとおりです。

任意規定・強行規定・契約内容(当事者間の合意)の優劣

強行規定>契約内容(当事者間の合意)>任意規定

※強行規定が最も優先的に適用される。

任意規定は有利となるよう修正する

任意規定はあくまで合意がない場合の判断基準

すでに触れたとおり、契約書を作成する目的のひとつに、任意規定の修正があります。

任意規定は、契約書がない場合や、その任意規定に関する合意・契約内容がない場合に適用される、法律の規定です。

こうした任意規定は、必ずしも自社にとって有利な内容とは限りません。

ものによっては、自社にとって不利な内容の任意規定である場合もあります。

ですから、契約書で、自社にとって有利な内容に契約条件を修正しなければなりません。

なお、任意規定の修正につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

法律の規定は任意規定かどうかは明記されていない

ただ、すでに触れたとおり修正できる規定はあくまで任意規定だけです。

たとえ当事者間の合意があったとしても、強行規定については、修正することはできません。

この点について、個々の法律の規定が任意規定であるかどうかは、その条文には、ほとんど明記されていません。

このため、少なくとも、合意しようとする契約内容に、どの法律の規定が適用されるのか、そして、その規定が任意規定なのか強行規定なのかを知らなければ、修正のしようがありません。

ポイント

  • 任意規定は、あくまで合意がない場合の判断基準でしかない。
  • 任意規定は、必ずしも自社にとって有利とは限らない。
  • 自社にとって有利となるように、任意規定は修正する。
  • 法律には任意規定かどうかは明記されていないことが多い。

強行規定に違反してはいけない

一部を除いて強行規定である旨は規定されていない

また、同様に、個々の法律の規定が強行規定かどうかは、その条文には、ほとんど明記されていません。

ただし、一部の法律で、特に弱者の保護を目的としてい場合に、強行規定であることが明記されている場合もあります(借地借家法など)。

こうした、法律で明記されている場合を除いて、ある規定が強行規定かどうかは、実ははっきりしないことが多いです。

このため契約条項を起案する際には、常にその契約条項が強行規定に違反する可能性を考慮する必要があります。

強行規定は強行規定の違反のリスク

強行規定は契約内容の無効の原因となる

強行規定に違反した場合のリスクとしては、契約内容が無効となる、という点があります。

強行規定は、契約当事者の合意よりも優先して適用されるものですから、その合意は無効となります。

このため、契約書のリーガルチェックの際、強行規定に違反していないかどうかのチェックを怠った場合や、強行規定の違反を見逃した場合は、その後トラブルになった際に、想定外のリスクとして現れます。

こうした想定外のリスクを回避するためには、事前に強行規定の有無を徹底的にチェックして、無効となる契約を結ばないように注意する必要があります。

強行法規は罰則や行政処分の原因となる

強行規定は、単に民事上=契約内容として無効となるものだけではありません。

強行規定の中には、罰則や行政処分の原因となるものもあります。

こうした、罰則付きや行政処分の原因となる強行規定については、違反によって、罰則が科されたり行政処分が下されたりする可能性もあります。

このような点からも、契約書のリーガルチェックの際には、強行規定への違反がないように、徹底的にチェックする必要があります。

ポイント

  • 強行規定は、一部の例外の法律を除いて、強行規定である旨が規定されていない。
  • 強行規定に違反すると契約内容が無効となる。
  • 強行規定に違反すると、場合によっては罰則や行政処分の原因となる。

任意規定・強行規定の見分け方・区別は?

契約に適用される個々の法律・規定を確認する

以上のように、契約書を作成する際には、その契約内容が法律(特に民法)の任意規定・強行規定に違反しないかどうかが重要となります。

このため、実務上は、契約に適用される法律がどの法律であるかの判断が重要となります。

そのうえで、契約条項と法律の条項を照らし合わせ、どの契約条項にど法律の条項が適用されるのかを判断することになります。

こればかりは、それぞれの契約と法律の知識がなければ、判断できません。

任意規定か強行規定かは判例・学説で区別して見分ける

そのうえで、法律の条項が任意規定か、または強行規定を区別して見分けます。

すでに触れたとおり、一部の法律では、個々の条項が強行規定であることが明記されてる場合もあります。

しかしながら、ほとんどの法律の規定では、そのような規定がありません。

そこで、契約実務上の任意規定・強行規定の見分け方・区別のしかたとしては、判例と学説の確認です。

過去の判例と学説を丁寧に調べることで、法律の条項が任意規定・強行規定のどちらであるかを区別し、見分けます。

任意規定・強行規定は専門家に確認する

このように、契約書を作成する場合、契約内容について、そもそもどの法律が適用されるのかを知らなければ、任意規定・強行規定のチェックのしようがありません。

また、適用される法律がわかったとしても、どの規定が適用されるのか、そしてその規定が任意規定・強行規定のいずれかも、よく調べなければなりません。

こうした重要な確認作業に漏れがあると、契約条項が無効になったり、罰則や行政処分の対象となるリスクがあります。

しかしながら、この確認作業は、契約実務に関する知識・経験がないと、できないものです。

このため、契約書の作成については、外部の専門家による確認や助言を受けながら、進めてください。

ポイント

  • 任意規定・強行規定を区分し、見分けるためには、その契約に適用される法律をのものを知る必要がある。
  • 契約に適用される法律が判明した場合、個々の法律の条項が任意規定か強行規定かは、判例・学説を調べることにより区分し、見分ける。
  • 任意規定・強行規定は、知らなけば対処のしようがないため、なるべく外部の専門家の確認や助言を受ける。