典型契約・有名契約とは?その種類・一覧・具体例・民法の条文を解説

【意味・定義】典型契約・有名契約とは?

【意味・定義】典型契約・有名契約とは?

典型契約・有名契約とは、民法に規定された13種類の契約をいう。




典型契約・有名契約は民法に規定がある契約

典型契約・有名契約の種類一覧・リスト

典型契約とは、民法に規定がある契約のことです。

典型契約は、民法上で名称が規定されていることから、別名「有名契約」といいます。

具体的には、次の13種類の契約のことをいいます。

民法上の13種類の典型契約・有名契約の一覧・リスト

典型契約でない契約=非典型契約

なお、典型契約に該当しない契約のことを、「非典型契約(無名契約)」といいます。

【意味・定義】非典型契約・無名契約とは?

非典型契約・無名契約とは、典型契約以外の、民法に規定がない契約をいう。

非典型契約(無名契約)につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

非典型契約・無名契約とは?種類・具体例の一覧は?

典型契約と非典型契約の違いは?

このように、典型契約は民法に規定されている契約であり、非典型契約は民法に規定されていない契約です。

このため、ひとことでいえば、典型契約と非典型契約の違いは、民法に規定されているかどうか、ということです。

典型契約と非典型契約の違い

典型契約と非典型契約の違いは、民法に規定されているかどうか。





13種類の典型契約・有名契約の概要・具体例

契約の種類意味・定義の概要・具体例
贈与契約【意味・定義】贈与契約とは、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与え、相手方がこれを受ける契約をいう。


【具体例】プレゼント、お小遣い、生前贈与、死因贈与など

売買契約【意味・定義】売買契約とは、当事者の一方がある財産権を相手方に移転し、相手方がこれに対してその代金を支払う契約をいう。


【具体例】スーパーやコンビニでの買い物の契約、動産売買契約(物品の仕入れの契約など)、不動産売買契約、売買取引基本契約(原材料・商品の継続的仕入れ・供給の契約など)、販売店契約(売買型)など

交換契約【意味・定義】交換契約とは、当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転する契約をいう。


【具体例】物々交換、株式交換(会社法第2条第31号)、土地改良法における農地の交換分合(土地改良法第97条以下)、土地収用法における替地の提供(土地収用法第82条)

消費貸借契約【意味・定義】消費貸借契約とは、当事者の一方が、ある物を相手方から借り受け、品質及び数量の同じ物を返還をする契約をいう。


【具体例】米・味噌・醤油などの貸し借り、金銭消費貸借契約(住宅ローン、事業資金の融資など)

使用貸借契約【意味・定義】使用貸借契約とは、当事者の一方=借主が、相手方=貸主からある物を無償で借り受け、「使用及び収益」をした後に返還をする契約をいう。


【具体例】自転車や自動車の無償の貸し借り、地・建物・設備・機材の無償の貸借契約、(物ではありませんが)知的財産権の無償でのライセンス契約など

賃貸借契約【意味・定義】賃貸借契約とは、当事者の一方=借主が、相手方=貸主からある物を有償で借り受け、賃料を支払い、「使用及び収益」をした後に返還をする契約をいう。


【具体例】レンタル契約、リース契約、土地賃貸借契約・建物賃貸借契約、サブリース契約など

雇用契約【意味・定義】雇用契約とは、労働者が労働に従事し、使用者が労働に対する報酬を支払う契約をいう。
請負契約【意味・定義】請負契約とは、請負人が仕事の完成を約束し、注文者が、その仕事の対価として、報酬を支払うことを約束する契約をいう。


【具体例】建設工事請負契約(新築工事、リフォーム工事、修理など)、物品・製品等の製造請負契約、製造請負取引基本契約、運送請負契約、システム開発等の契約(請負型)、販売店契約(請負型)など

委任契約【意味・定義】委任契約とは、委任者が、受任者に対し、法律行為をすることを委託し、受任者がこれ受託する契約をいう。


【具体例】弁護士との訴訟代理契約、税理士との税務業務委託契約、医師と患者との医療行為・診療行為の契約(※準委任契約)など

寄託契約【意味・定義】寄託契約とは、当事者の一方が相手方のためにある物を保管をする契約をいう。


【具体例】倉庫業者が顧客のために荷物を預る契約、銀行の預金契約(※消費寄託契約)など

組合契約【意味・定義】組合契約とは、各当事者が出資をして共同の事業を営む契約をいう。


【具体例】建設工事における建設業者のジョイントベンチャー(JV、共同企業体)契約

終身定期金契約【意味・定義】終身定期金契約とは、当事者の一方が、自己、相手方または第三者が死亡するまで、定期的に金銭その他の物を相手方または第三者に給付する契約をいう。


【具体例】(現在ではほとんど締結されない契約のため該当なし)

和解契約【意味・定義】和解契約とは、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめる契約をいう。


【具体例】交通事故等の示談契約など

なお、個々の契約に関する民法上の条文や、具体例については、詳しくは、次のページをご覧ください。

13種類の典型契約・有名契約の民法の条文一覧とその具体例について解説





典型契約の意義―古くからある契約

典型契約は古くは古代ローマ法の時代からある契約

典型契約は、文字通り典型的な契約で、歴史も古いものです。

それこそ、古代ローマの時代にすでに存在していたような、歴史的なものもあります。

これほど歴史が古く、多くの人々が関わっている契約ですから、今までに、様々なトラブルも発生しています。

こうした過去の数多くのトラブルを参考に、民法などの法律が制定され、よくあるトラブルの対処に適用されています。

典型契約は契約書がなくてもある程度対応は可能

こうした事情から、典型契約の場合、仮に契約書がなかったとしても、民法や商法などの法律に、最低限の契約内容の規定があります(あくまで最低限ではありますが)。

契約の種類によっては、民法の内容よりも、さらに細かく契約内容が規定されている法律=特別法もあります。

【意味・定義】特別法とは?

特別法とは、ある特定の事項について、一般法よりも優先して適用される法律をいう。

特別法につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

一般法と特別法とは?違い・具体例・優先などをわかりやすく解説

例えば、雇用契約であれば労働基準法、組合契約のなかでもLLP(有限責任事業組合)であれば有限責任事業組合契約法、土地建物の賃貸借であれば借地借家法などがあります。

典型契約は判例が蓄積されている

また、このような民法以外の特別法がない場合であっても、典型契約は、判例によりトラブルを解決しやすい、という特徴があります。

典型契約は、典型的な契約であるために締結や紛争の件数が多く、裁判も数多く起こされています。

このため、判例も蓄積されており、法律に規定がないトラブルであっても、過去の判例によってトラブルを処理しやすい、という特徴もあります。

以上のように、法律が整備され、判例も蓄積されている点が、典型契約の特徴です。

ポイント
  • 典型契約は、古くは古代ローマ法の時代からある、文字どおり典型的な契約。
  • 典型契約は、契約書がなくても、ある程度対応が可能な契約。
  • 典型契約は判例が蓄積されているため、民法に規定がないトラブルについても、ある程度は対応可能な契約。





典型契約であっても契約書は作成する

典型契約の規定はあくまで最低限のもの

もっとも、企業間取引の契約実務では、典型契約であってもできるだけ契約書を作成するようにします。

確かに、すでに触れたとおり、典型契約では、最低限の法律=民法が整備されており、判例も蓄積されています。

しかしながら、企業間取引では、典型契約であったとしても、民法の規定どおりの単純な契約内容であることは、まずありません。

民法に規定されている典型契約の条文は、それほど多くはなく、内容も、それこそ最低限のものしかありません。

場合によっては、企業間取引での個別具体的な契約条項には対応していないものもあります。

民法を補完する契約書が必要となる

このような事情があるため、企業間取引の契約では、民法の規定だけでは不十分と言わざるを得ません。

そこで、民法の典型契約の規定を補完するために、契約書の作成が重要となります。

契約書を作成する理由・目的

民法にもとづく契約内容は最低限のものであることが多いことから、契約内容を補完するを約を規定した契約書が必要となるから。

【改正民法対応】民法・法律と異なる契約内容・特約の作り方・書き方は?

また、例えば、和解契約のように、トラブル解決のための契約などは、現実的には、契約書を作成しないで契約を交わすること自体、ありえない話です。

典型契約の中には契約書の作成が義務づけられた契約もある

さらに、典型契約の中には、契約書の作成が義務づけられたものもあります。

具体的には、次のものがあります。

契約書の作成が義務づけられた典型契約

この他、法律上作成が義務づけられている契約書につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

【改正民法対応】法律で作成義務がある契約書は?具体例や理由についても解説

このように、企業間取引の契約実務では、さまざまな理由によって、契約書の作成が重要となります。

単純そうに見える典型契約であっても、契約書の作成を怠ってはなりません。

ポイント
  • 民法上の典型契約の規定は、あくまで最低限のものでしかない。
  • 民法上の最低限の規定を補完するため、契約書が必要となる。
  • 典型契約の中には、法律の規制により、契約書の作成が義務づけられた契約もある。





典型契約・有名契約に関するよくある質問

典型契約・有名契約とは何ですか?
典型契約・有名契約とは、民法にその存在が規定されている13種類の契約のことです。
13種類の典型契約・有名契約には、どのようなものがありますか?
13種類の典型契約・有名契約は、以下のとおりです。

  • 贈与契約(民法第549条):当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与え、相手方がこれを受ける契約
  • 売買契約(民法第555条):当事者の一方がある財産権を相手方に移転し、相手方がこれに対してその代金を支払う契約
  • 交換契約(民法第586条):当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転する契約
  • 消費貸借契約(民法第587条):当事者の一方が、ある物を相手方から借り受け、品質及び数量の同じ物を返還をする契約
  • 使用貸借契約(民法第593条):当事者の一方=借主が、相手方=貸主からある物を無償で借り受け、「使用及び収益」をした後に返還をする契約
  • 賃貸借契約(民法第601条):当事者の一方=借主が、相手方=貸主からある物を有償で借り受け、賃料を支払い、「使用及び収益」をした後に返還をする契約
  • 雇用契約(民法第623条):労働者が労働に従事し、使用者が労働に対する報酬を支払う契約
  • 請負契約(民法第632条):請負人が仕事の完成を約束し、注文者が、その仕事の対価として、報酬を支払うことを約束する契約
  • 委任契約(民法第643条):委任者が、受任者に対し、法律行為をすることを委託し、受任者がこれ受託する契約
  • 寄託契約(民法第657条):寄託契約とは、当事者の一方が相手方のためにある物を保管をする契約
  • 組合契約(民法第667条):組合契約とは、各当事者が出資をして共同の事業を営む契約
  • 終身定期金契約(民法第689条):終身定期金契約とは、当事者の一方が、自己、相手方または第三者が死亡するまで、定期的に金銭その他の物を相手方または第三者に給付する契約
  • 和解契約(民法第695条):当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめる契約