契約書を作成する費用は、契約当事者のどちらが負担するべきなのでしょうか?
民法上の原則としては、契約書の作成費用は、契約当事者が折半して負担することになります。もちろん、特約で、どちらか一方の当事者が負担することにしてもかまいません。
なお、企業間取引の契約の場合は、一般的には、どちらか一方が費用を負担して作成することがほとんどです。

このページでは、当事務所によく寄せられるご質問である、誰が契約書の作成費用を負担するのか、という疑問のお答えしています。

民法上の原則としては、契約書の作成費用を含めて、契約の締結に必要な費用は、当事者の折半とされています。

ただ、通常の企業間取引では、一般的には、契約書作成費用は、どちらか一方だけが負担することが多いです。

この場合、契約書を作成する当事者は、契約交渉の主導権を握りやすくなります。




民法では「契約に関する費用」は等分負担

”契約の締結”に必要な費用は折半

民法では、原則として、契約に関する費用は、契約当事者の等分負担となっています。

民法第558条(売買契約に関する費用)

売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。

民法第559条(有償契約への準用)

この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

ここでいう「契約に関する費用」というのは、契約の締結に必要な費用であって、債務者が債務を弁済する際に必要な費用(民法第485条)ではありません。

このため、民法上の原則では、契約書の作成費用は、それぞれが等分に負担することになります。

一般的な企業間取引ではどちらかの当事者が負担する

ただ、一般的な企業間取引では、どちらか一方の当事者が契約書を作成します。

この際、作成に必要な費用も、その当事者だけが負担することがほとんどです。

ここでいう費用には、外部の専門家に依頼して作成してもらった費用も含みます。

このため、契約書を作成する契約当事者は、意外に費用が発生してしまう場合もあります。

契約書はどちらの契約当事者が作成してもいい

なお、どちらの契約当事者が契約書を作成するのかについては、原則としては、特に決まっていません。

逆にいえば、どちらの契約当事者が契約書を作成するのかも、交渉次第で自由に決められます。

ただし、下請法のように、どちらかの契約当事者に、契約書の作成が義務づけている法律もあります。

この場合は、その法律の規制にもとづき、どちらかの契約当事者が、契約書を作成しなければなりません。

このほか、契約書の作成当事者につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

契約書はどちらが用意するべきなのでしょうか?

ポイント
  • 民法の原則では”契約の締結”に必要な費用は、契約当事者が折半して負担する。
  • 一般的な企業間取引では、契約書の作成費用は、どちらかの当事者が一方的に負担する。
  • 法律による規制がない限り、契約書は、どちらの契約当事者が作成してもいい。





契約書作成費用は交渉の主導権を握る費用

契約書を作成する契約当事者は契約交渉の主導権を握る

このように、契約書を作成する契約当事者は、相応の費用を負担しなければなりません。

しかも、通常、この費用は、一方的に負担することになります。

これは、一見して不公平なようですが、そうとも言い切れません。

契約書を作成する契約当事者は、交渉の主導権を握ることができる、というメリットがあります。

自社が作成して提示するファーストドラフトのメリット・デメリット・リスクは?

ということは、契約書の作成費用は、契約交渉の主導権を握るための費用、ということになります。

一方だけの負担ではなく双方の負担としてもいい

ただ、必ずしも一方の契約当事者だけが、契約書の作成費用を負担するべきというわけではありません。

冒頭で触れたとおり、民法上の原則では、契約書の作成費用は、そもそも双方の契約当事者が折半するものです。

ですから、一方の契約当事者による全額の負担ではなく、双方の契約当事者による負担としてもかまいません。

これは、特に契約書の作成に多額の費用が発生する場合に、検討するべき方法です。

双方負担の場合は契約交渉の主導権を握りにくい

特に、複雑な案件や、企業の根幹に関わる重大な案件の場合は、それなりの費用がかかってきます。

そういう多額の費用を一方だけが負担するというのであれば、負担する側としては、なかなか納得できません。

このような事情から、契約書の作成費用を契約当事者で分担することもあります。

もちろん、契約費用を分担すると、一方的に費用を負担する場合に比べて、負担が軽くなるため、契約交渉の主導権自体は、握りにくくなります。

公平な費用負担は公平な契約書になりやすい

もっとも、契約当事者の双方が契約書の作成費用を負担した場合、公平、あるいは、当事者の関係がそのまま反映された条件での契約書ができやすくなります。

ですから、契約当事者が、お互いにとって公平な契約を結びたいと思っているのであれば、費用も公平に分担する、という方法も検討するべきです。

こうすることで、少なくとも、相手方にとって一方的に有利な契約書が作成されるリスクを抑止できます。

もちろん、しっかりと交渉しなければ、費用だけ負担させられて、一方的に不利な契約書を作成されることになります。

相手方が作成する契約書は相手方にとって有利

逆に、相手方から契約書の作成費用を負担したいという申出があった場合は、注意が必要です。

そうした契約書は、相手にとって有利にできていることがほとんどです。

わざわざ高い費用を負担して作成する契約書である以上、相手方にとって有利な内容としているのは、当然のことです。

こうした相手方が作成する契約書のリスクにつきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

相手が作成して提示するファーストドラフトのメリット・デメリット・リスクは?

ポイント
  • 契約書を作成する契約当事者は、契約交渉の主導権を握ることができる。
  • 契約書の作成費用は、一方の契約当事者だけの負担ではなく、双方の契約当事者の負担としてもいい。
  • 双方が契約書の作成費用を負担する場合は、一方的に負担する場合と違って、契約交渉の主導権を握りにくい。
  • 公平な契約書を求めるのであれば、費用負担を公平にしたうえで、契約交渉をする。
  • 相手方が費用を負担する契約書は、当然、相手方にとって有利にできている。