こんにちは。契約書作成専門・小山内行政書士事務所代表の小山内です。

このページでは、法律で作成が義務づけられている契約書について解説しています。

契約書を作成する理由はさまざまですが、最も単純な理由が、「法律で作成義務があるから」というものです。

契約書は、契約自由の原則により、作成する・しないは、自由に決められます。

ところが、一部の法律では、契約自由の原則の例外として、契約書の作成が義務づけられており、しかも、大半が罰則つきです。

このページでは、こうした、法律による作成義務がある契約書について、解説しています。

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一部の法律により契約書の作成義務がある

契約書は原則として作成する法的義務はない

原則として、契約書は、作成する義務がありません。

ほとんどの契約は、口約束=口頭であっても有効に成立します。

このため、わざわざ契約書を作成しなくても、契約自体は有効に成立します。

ただし、一部の法律では、契約書の作成義務を課している場合があります。

大半は契約書作成義務に違反すると罰則がある

こうした契約書作成義務を課している法律は、ほとんどが、弱者を保護するための法律です。

ここでいう弱者とは、消費者や、事業者であっても、立場が弱い事業者のことを意味します。

逆にいえば、立場が強い事業者の方を規制しているものが多いです。

このため、ほとんどの法律では、契約書の作成義務に違反すると、罰則が課されます。

場合によっては行政処分の対象となることもある

また、こうした法律の大半は、事業に関する許認可の根拠となっているものが多いです。

このため、契約書の作成義務に違反した場合は、何らかの行政処分の対象となることもあります。

しかも、単に契約書を作成することそのものが義務づけられているだけではなく、契約書に記載するべき事項まで、細かく法律で規定されています。

このため、こうした規制を守らなければ、これもまた行政処分の対象となる可能性があります。

ポイント

  • 契約書は、原則として作成する法的な義務はないが、一部の法律により、契約書の作成義務がある場合もある。
  • 法律上の契約書作成義務に違反すると、ほとんどの場合は罰則がある。
  • 許認可の根拠となっている法律の義務の場合は、行政処分の対象となる。
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法律での作成義務がある契約書の具体例は?

作成+記載事項の義務がある契約書

法律で義務づけられている契約書の具体例は、次のとおりです。

法律により作成義務がある契約書

  • 一部の業務委託契約書等(下請法)
  • 建設工事請負契約書(建設業法)
  • 家内労働手帳(家内労働法)
  • 建設工事設計受託契約書・建設工事監理受託契約書(建築士法)
  • 雇用契約書・労働契約書・労働条件通知書(労働基準法・労働契約法)
  • 労働者派遣契約書(労働者派遣業法)
  • 一部の消費者向けの契約書(特定商取引法・割賦販売法)
  • 金融商品取引契約書(金融商品取引法等)
  • 投資顧問契約書(同上)
  • 探偵契約書(探偵業法)
  • 住宅宿泊管理受託契約書(住宅宿泊事業法)
  • 保険契約書・保険約款(保険業法)
  • 信託契約書(信託業法)
  • マンション管理委託契約書(マンション管理適正化法)
  • 不動産特定共同事業契約書不動産特定共同事業法)
  • ゴルフ場会員契約書(ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律)
  • 商品投資顧問契約書(商品投資に係る事業の規制に関する法律)
  • 定期建物賃貸借契約書(借地借家法)
  • 特定商品等預託等取引契約書(特定商品等の預託等取引契約に関する法律)
  • 貸金業者による金銭消費貸借契約書(貸金業法)
  • 一部のフランチャイズ契約書(中小小売商業振興法)
  • 積立式宅地建物販売契約書(積立式宅地建物販売業法)
  • 警備契約書(警備業法)
  • 熱供給契約書・約款(熱供給事業法)
  • 電力小売供給契約書・約款(電気事業法)
  • ガス小売供給契約書・約款(ガス事業法)
  • 産業廃棄物処理契約書(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)
  • 不動産の売買・交換・賃貸に関する契約書(宅建業法)
  • 企画旅行契約書・手配旅行契約書等(旅行業法)
  • 福祉サービス利用契約書(社会福祉法)
  • 商品取引契約書(商品先物取引法)

これらの契約書は、作成自体が義務づけられいますが、単に作成すればいい、というわけではありません。

これらの契約書は、記載すべき事項についても、法律で義務づけられています。

また、作成したうえで、相手方に対し、交付または明示の義務があります。

このため、根拠となる法律をよくチェックしたうえで、法律に規定されている記載事項を遵守したうえで、契約書を作成する必要があります。

クーリング・オフについては書式の規制もある

なお、いわゆるクーリング・オフに関する規制など、重要な法規制がある法律では、さらに厳しい規制があります

具体的には、契約書作成の義務や記載事項の義務だけではなく、書式の指定があります。

こうした契約書の具体例は、次のとおりです。

法律によって書式に規制がある契約書

  • 一部の消費者向けの契約書(特定商取引法施行規則・割賦販売法施行規則)
  • 貸金業者による金銭消費貸借契約書その他の書面(貸金業法施行規則)
  • 保険契約書・保険約款(中小企業等協同組合法施行規則・認可特定保険業者等に関する命令)
  • 金融商品取引契約書(銀行法施行規則・信用金庫法施行規則・中小企業等協同組合法施行規則・保険業法施行規則・信託業法施行規則・金融機関の信託業務の兼営等に関する法律施行規則・労働金庫法施行規則・農林中央金庫法施行規則・協同組合による金融事業に関する法律施行規則・水産業協同組合法施行規則・農業協同組合及び農業協同組合連合会の信用事業に関する命令・漁業協同組合等の信用事業等に関する命令)
  • 共済契約書・特定共済契約書(水産業協同組合法施行規則・農業協同組合法施行規則)
  • 商品取引契約書(商品先物取引法施行規則)
  • ゴルフ場会員契約書(ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律施行規則)
  • 商品投資顧問契約書(商品投資顧問業者の業務に関する省令)
  • 特定商品等預託等取引契約(特定商品等の預託等取引契約に関する法律施行規則)
  • 電気通信役務の提供に関する契約書(電気通信事業法施行規則)

これらの規定は、主に重要な契約条項(特にクーリング・オフ)に関する注意喚起のため、文字の大きさを一定以上(日本工業規格の8ポイントまたは12ポイント)としています。

また、ものによっては、枠の記載を義務づけていたり、文字の色(赤)を指定するものもあります。

当然ながら、こうした規制に反する契約書を使用した場合は、罰則が課されます。

ポイント

  • 契約書の作成義務は、より正確には、作成そのものの義務と、最低限の記載事項と、相手方に対する交付・明示の義務がある。
  • 場合によっては、重要な契約条項については、文字の大きさ・色・枠などの指定がある。
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契約書は法律を守っている証拠となる

実は法律上は契約書ではなく「書面」であることが多い

このように、法律により作成が義務づけられた契約書は意外に多くあります。

ただ、実は、これらの法律の条文では、「契約書」という表現ではなく、「書面」とされていることがほとんどです。

このため、法律の確認に慣れていないと、「書面」の規定を見逃すことがあります。

また、あたかも契約書を作成しなくてもいいように誤解することがあります。

しかし、実務上は、こうした法律にもとづく書面の作成義務がある場合は、契約書を作成します。

法律上は一方的に交付・明示をすればよい

また、実際に作成した「書面」=契約書についても、相互に交付する義務を規定した法律は、実は、ほとんどありません。

たいていの法律では、作成義務がある当事者から、相手方に対し、書面の交付や明示をすることだけが義務とされています。

ごく一部の法律だけが、契約書を相互に交付することを義務づけているだけに過ぎません(建設業法第19条など)。

つまり、厳密には、契約書を当事者の数だけ作成し、各当事者が1通ずつ保管するまでは、義務づけられていない法律がほとんどです。

相互に契約書を交付するのは証拠を残すため

では、契約書の作成・交付・明示の義務がある場合、法律の規定どおりに、相手方に対して、一方的に書面の交付・明示をするだけでいいのかといえば、そうではありません。

このような対処をすると、「書面」=契約書を作成し、相手方に対し、交付・明示をした証拠が残りません。

そこで、書面を作成し、相手方に対し確実に交付・明示をした証拠として、契約書を相互に交付するのです。

逆にいえば、手元に残った契約書の原本を、相手方が契約書の交付・明示を受けた証拠(一種の受領証書)とします。

契約書の作成により罰則や行政処分を回避する

このように、契約書を作成し、相互に交付することは、「書面」の作成・交付・明示の義務を果たしてる、重要な証拠となります。

この契約書を残すことによって、法律による罰則や行政処分を回避することができます、

なお、こうした法律でわざわざ契約書の作成・交付・明示の義務を課しているのは、それだけトラブルが多い契約だからです。

このため、罰則や行政処分の回避だけではなく、契約上のリスクやトラブルを回避するためにも、ぜひ契約書を活用してください。

ポイント

  • 実は法律上の規定としては、契約書ではなく「書面」であることが多いため、見逃しに注意する。
  • ほとんどの法律では、一方的に交付・明示をすればよいことになっているが、それでは交付・明示した証拠が残らない。
  • 相互に契約書を交付するのは、交付・明示をした証拠を残すため。
  • 契約書の作成により、罰則や行政処分を回避できる。