【意味・定義】基本契約・取引基本契約とは?

【意味・定義】基本契約・取引基本契約とは?

「基本契約・取引基本契約」とは、継続的取引の基本となる契約であって、個々の個別の契約に共通して適用される契約条項が規定されたものをいう。




基本契約は継続的取引で締結される契約

基本契約は契約実務の効率化のために締結する

基本契約は、企業間の継続的な取引の際に、個々の取引に共通して適用される条項だけを規定した契約です。基本契約は、取引基本契約ともいいます。

主に、基本契約は、取引が売買契約や請負契約である場合に締結されることが多いです。

企業間取引としての売買契約や請負契約は、様々な契約条項が規定されるため、全体が30~50条程度の契約書になります。

このような条項が多い契約書は、ページ数も多くなるため、取引のつど、すべての契約条項が規定された契約書を取交すのは、非常に非効率です。

このため、個々の取引に共通して適用される条項について抽出し、別途基本契約として締結します。

契約書を作成する理由・目的

継続的な売買契約や請負契約において、契約を締結する度に共通する契約条項が規定された売買契約書や請負契約書を取交わすことは、非効率かつ無駄であることから、あらかじめ共通する契約条項が規定された取引基本契約書を作成して取交わすことにより、効率よく取引きができるから。

基本契約は個別契約とワンセットの契約

このように、基本契約、個々の取引に共通して適用される条項を規定します。

そして、個々の取引ごとにことなる取引条件については、取引のつど、個別契約を締結します。

個別契約の契約書については、一般的な契約書と同じように、相互に取交す個別契約書を作成する場合もあります。

しかし、ほとんどの場合は、個別契約書ではなく、注文書・注文請書や、発注書・受注書で契約を締結します。

注文書・発注書とは?その意味・定義・法的なポイントについて解説

ポイント
  • 基本契約書は、単体で使用するのではなく、個別契約書または注文書・注文請書や発注書・受注書をセットで使う。
  • 基本契約書は、個々の取引に共通して適用される契約条項について規定しておくことで、個別契約に規定される条項を省略し、契約実務を効率化するために利用される。





基本契約・個別契約に規定される主な契約条項

基本契約では、主に次のような条項が規定されます(売買・請負のものを想定しています)。

基本契約の契約条項・書き方

基本契約の契約条項・書き方
  • 個別契約の成立
  • 納入
  • 検査
  • 契約不適合責任
  • 所有権の移転
  • 危険負担の移転
  • 支給品の取扱い
  • 貸与品の取扱い
  • 支払条件
  • 支払方法
  • 製造物責任
  • 知的財産権の侵害
  • 知的財産権の取扱い
  • 改良発明の取扱い
  • 秘密保持義務
  • 再委託
  • 契約解除
  • 期限の利益の喪失

個別契約の契約条項・書き方

個別契約では、主に次のような条項が規定されます。

個別契約の契約条項・書き方
  • 受発注の年月日
  • 商品名・製品番号等の商品・製品を特定する事項
  • 納入期限・納入期日
  • 納入場所
  • 検査期限
  • 単価・数量・料金の金額等
  • 支払期限





【ポイント】基本契約は主に4パターン

事業者間の継続的な取引はすべて基本契約にできる

基本契約には、様々なタイプがあります。具体的には、次のようなものがあります。

基本契約の4パターン
  • 取引基本契約:一般的には、売買契約または請負契約のどちらかの基本契約のこと。
  • 売買取引基本契約:商社・問屋・卸売業者等と小売店との間で締結されるような、売買契約に関する基本契約のこと。
  • 製造請負取引基本契約:製造業者と商社・問屋・卸売業者・小売店・下請けの製造業者等との間で締結されるような、製造請負契約に関する基本契約のこと。
  • 業務委託基本契約:事業者間で締結される、継続的に発生する業務委託に関する基本契約のこと。

この他にも、さまざまなタイプの基本契約がありますが、共通するのは、企業間の契約であり、継続した契約である、ということです。

こうした企業間の継続的契約については、基本契約にすることができます。

システム開発基本契約だけは「スポット」の基本契約

例外として、大規模なシステム開発の契約に関しては、スポットの契約であっても、基本契約とすることがあります。

こうしたシステム開発の案件では、いわゆる「多段階方式」の契約で開発が進められることがあります。

大規模なシステム開発では、要件仕様の確定・外部設計・内部設計・開発・実装・保守メンテナンス、というように、個々の工程ごとに契約を締結する場合があります。

この場合、個々の工程の契約が個別契約となり、この個別契約に共通して適用される契約条項は、基本契約として締結されます。





【収入印紙】基本契約書の収入印紙は原則として4,000円

請負契約や売買契約の基本となる基本契約書は、いわゆる「7号文書」に該当し、4,000円の収入印紙を貼る必要があります。

これに対し、(準)委任契約の基本となる基本契約書は、そもそも課税文書ではありませんので、収入印紙を貼る必要はありません。

ただし、(準)委任契約のなかでも、「売買の委託」や、「売買に関する業務…を継続して委託する」契約書の場合は、次のとおり、7号文書に該当します。

印紙税法施行令第26条(継続的取引の基本となる契約書の範囲)

法別表第1第7号の定義の欄に規定する政令で定める契約書は、次に掲げる契約書とする。

(1)特約店契約書その他名称のいかんを問わず、営業者(法別表第1第17号の非課税物件の欄に規定する営業を行う者をいう。)の間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する2以上の取引を継続して行うため作成される契約書で、当該2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定めるもの(電気又はガスの供給に関するものを除く。)

(2)代理店契約書、業務委託契約書その他名称のいかんを問わず、売買に関する業務、金融機関の業務、保険募集の業務又は株式の発行若しくは名義書換えの事務を継続して委託するため作成される契約書で、委託される業務又は事務の範囲又は対価の支払方法を定めるもの

(3)(以下省略)

このため、「売買の委託」や、「売買に関する業務…を継続して委託する」契約書は、(準)委任契約の基本契約書であっても、4,000円の収入印紙を貼る必要があります。

ポイント
  • 売買契約・請負契約の取引基本契約書は、4,000円の収入印紙が必要。
  • (準)委任契約の取引基本契約は、収入印紙が不要。
  • ただし、売買の委託、売買に関する業務…を継続して委託する契約は、(準)委任契約であっても、例外として、4,000円の収入印紙が必要。





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