このページでは、契約書の作成年月日の書き方について解説しています。

作成年月日の書き方自体は非常に簡単です。契約書末尾や冒頭などにある署名欄に、実際に契約書を作成し、サインをした日付を記載するだけです。

しかしながら、契約書の作成年月日は、むしろ、その法的な効果がポイントとなります。

このページでは、こうした契約書の作成年月日について、解説します。




契約書の作成年月日とは?

作成年月日は、通常は、署名欄の署名箇所の直前か、署名欄が記載されたページと同じページのどこかに記載されています。

契約書の署名欄のサインのしかた・書き方・押印のしかたは?

作成年月日には、文字どおり、契約書を作成した日を記載します。

【意味・定義】作成年月日(契約書)とは?

契約書の作成年月日とは、契約書を作成した日(≒署名押印をした日)をいう。





契約書の作成年月日の書き方・具体例

一般的な株式会社同士の契約書では、作成年月日がある署名欄は、次のような記載とします。

【契約条項の書き方・記載例・具体例】署名欄

2022年4月30日

東京都◯◯区◯◯町◯◯

株式会社佐藤商事

代表取締役 佐藤 一郎 

神奈川県◯◯市◯◯区◯◯町◯◯

鈴木工業株式会社

代表取締役 鈴木 太郎 

(※商号は架空のものです)

特に署名欄で作成年月日を左に寄せるルールがあるわけではありませんので、右に寄せても結構です。

また、住所や署名箇所も、特に右に寄せるルールがあるわけではありません。

なお、年数の書き方につきましては、元号(和暦)であっても、西暦であっても、どちらでも構いません。





日付にかかわる契約では作成年月日が重要

契約書の作成年月日≒契約成立の日

作成年月日は、契約を作成した時間を特定するという意味で、非常に重要です。

一般的に、契約書の作成年月日は、何も特約や反証がなければ、契約の成立の日とされます。

ほとんどの契約では、何らかの時間に関する契約内容があり、しかも重要な内容であることがほとんどです。

このため、作成年月日は、契約内容に大きな影響を与えます。

継続的契約では契約の有効期限の起算点となる

作成年月日が重要となる契約は様々ですが、特に重要となるのが、継続的契約です。

継続的契約の具体例

継続的な契約では、有効期間の設定のしかたとして、「本契約の成立の日から起算して◯年間」「本契約書末尾記載の年月日から起算して◯年間」のような規定をすることがあります。

こうした有効期間の設定をした場合、当然ながら、その起算点である契約書の作成年月日は、非常に重要です。

もっとも、継続的契約の有効期限の設定は、この他にも、「◯年◯月◯日から◯年◯月◯日まで」のような規定のしかたもあります。

下請法では「発注年月日」が必須記載事項

なお、下請法が適用される企業間取引の契約書の場合、発注年月日が、必須記載事項とされています(下請法第3条)。

より正確には、下請代金支払遅延等防止法第三条の書面の記載事項等に関する規則第1条第2号に、次のとおり規定されています。

下請代金支払遅延等防止法第三条の書面の記載事項等に関する規則第1条

1  下請代金支払遅延等防止法(以下「法」という。)第三条の書面には、次に掲げる事項を明確に記載しなければならない。

(1)(省略)

(2)製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託(以下「製造委託等」という。)をした日、下請事業者の給付(役務提供委託の場合は、提供される役務。以下同じ。)の内容並びにその給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、下請事業者が委託を受けた役務を提供する期日(期間を定めて提供を委託するものにあっては、当該期間))及び場所

(以下省略)

このため、下請法が適用される契約の場合は、契約書(≒三条書面)の作成年月日と同様に、発注年月日についても、記載する必要があります。

ポイント
  • 契約書の作成年月日は、特に特約がなければ、契約成立の日とされる。
  • 契約書の作成年月日は、継続的契約では、契約の有効期限の起算点となる。
  • 下請法では、契約書(≒三条書面)に発注年月日≒作成年月日の記載が必須。





作成年月日は当事者や法令を確定する

作成年月日は契約書作成当時の当事者の状態を確定する

当事者の状態を確定する意味でも、作成年月日が重要となります。

契約書を作成した当時の状況によっては、契約を締結する権利能力が制限されていたり、場合によっては権利能力そのものが存在しない、ということもありえます。

例えば、個人が当事者の場合、契約書を作成した当時、当事者が成年であるのか、未成年者であるのかという点が、非常に重要です。

このように、作成年月日は、契約の効力そのものに関わる重要なポイントの判断基準になります。

法人の署名者・契約担当者の状態を確定する

契約書の作成年月日は、法人が当事者の場合も同様です。

具体的には、契約書を作成した当時、法人の契約締結の担当者に契約締結の権限があったかどうかの、重要な手がかりとなります。

同様に、代表取締役を称する人物は、契約書作成当時、本当に代表取締役であったのか、などの判断基準にもなります。

滅多にないことですが、代表権がないにもかかわらず勝手に契約を結ぶことは、理屈のうえでは可能です。

このため、特に重要な契約では、商業登記の確認と併せて、作成年月日の記載も確認します。

契約書の作成年月日は適用される法律の根拠となる

さらに、法令の適用についても、作成年月日は非常に重要です。

原則として、契約に適用される法律は、契約が成立した日≒契約書の作成年月日の時点のものが適用されます。

その後、適用された法律が改正されたリ、新しく適用される法律が成立したとしても、原則として、契約成立当時の法律が適用されます。

このため、改正法や新法が施行される前後では、法律の施行前後のどちらで契約を締結するべきかを慎重に検討したうえで、契約書を作成するべきです。

ポイント
  • 作成年月日は、契約書作成当時の当事者の状態、特に適法に契約を締結できる権利能力があったかどうかを確定する。
  • 作成年月日は、法人の署名者・契約担当者が、適法な契約締結の権限を有していたかどうかを確定する。
  • 契約書の作成年月日は、適用される法律の根拠となる。このため、特にその契約に適用される改正法や新法の施行日には注意する。